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コンパートメントNo.6のMKのレビュー・感想・評価

コンパートメントNo.6(2021年製作の映画)
3.8
カンヌがどうの…ってことを耳にしなかったら手に取ってなかったのかなぁという、ジャケやタイトルがそこまで魅力的に映らない作品。コンパートメントno.6って6号室的な意味?かなぐらいに思うし。

自分のいるべきところではない場所に憧れる学生が、自分が望まないところにいるかのような人物と出会い、憧れの存在であるパートナーが心なく?進めてくれた歴史的遺産を、目指すことの意味を失いながらも追い求めていくことで、自分の境遇やこれまでを人生や感性をトレースし、解放されていくドラマのように私には映った。

過去を知れば現在が容易に理解できる…とは劇中のうろ覚えのセリフ。

遥か長い旅路の果てに出会った歴史的にも重要な遺産…毎年降る雪の上でもゆらゆらと歩く主人公の姿はなんとなく共感できた。

考えてみるとリョーハって本当に存在したの?とさえ思えてくる。
自分に絡みつき付きまといながら感情むき出しに関係を求めてくるくせに、決してそれ以上の関係ではない人間味あふれる愛くるしい存在。

彼女を解放するだけのために存在するような、まさにタイタニックのジャックのように無責任で無関係なかけがえのない存在。

二人のやりとりはとっても好みで可愛くて観ていて楽しかったけど、リョーハの真意に辿り着けなかったために、物語上のメタフォリックな存在に祭り上げたくもなってしまう。

でも物語はじめのフィンランドの言葉にまつわるのやりとりや似顔絵のシーンを思い出すと二人の友情は確かに存在したと思う。

不思議で素敵な恋の物語。

みんな死んでしまえばいい。

こんなことを言う人は最後に自分だけ、この世に残されてもその悲しみに耐えられる強くて優しい人なのかもしれないなと、リョーハを観ていてふと思った。

自分の中で北欧の女性とロシアの男性にどんなバイアスがかかっていたんだろう?
この二人の年齢や国籍、セクシャリティによって物語は色んな観え方をするのかなぁなんてなんとなく思って観てた。なんとも不思議な恋愛?物語だった。

国産リメイクとかもちょっと興味ある。
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