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コンパートメントNo.6のhoshのレビュー・感想・評価

コンパートメントNo.6(2021年製作の映画)
4.0
恋人と旅行するはずがキャンセルされ1人寝台列車でロシアへ向かうことになったラウラ。同室の乗客リョーハは粗野な男で…
最悪の出会いから心を通わせ、ラウラの孤独が解消されるまでを描く。

しみじみと良い映画だった…本編で主人公の状況は全然好転しない。空回ることばっかり起きる。けれど、旅先の偶然の出会いが数ミリだけ人生を良くしてくれて、少しだけ前向きな気分になって終わる。この本っ当に僅かな希望の描き方と余白の残し方がとても好き。こういう映画が見たくて映画を見ているところがありますね。

車窓や客室の狭さと雄大な景色の対比をバキバキの構図と肩越しのショットでみせる撮影(シネスコの使い方が最高)。細かく揺れるようにすることで実際に電車に乗っている気分にさせる音響。

席の座り位置(食堂車の位置 離れた席→向かい合わせ)や眉や目線の動かし方(冒頭の話についていけない疎外感の描写や終盤の電話の場面が素晴らしすぎる!)といった言葉以外の部分でラウラの孤独や2人の関係性の変化を伝える演技や演出。車掌との少しの会話やお茶汲みといったミニマムな部分にもドラマを見出す視点の豊かさ。全ての質が高くて終始「ああいい映画見てるなあ」という気分だった。
旅、寝台特急という狭さを活かした舞台立てでもあるのでミニシアターで見たのも良かった。

最後に、旅する映画は景色の美しさや雄大さがスクリーンに映えるし、体験性が高い(主人公の視点に没入しやすい)から映画館で見るのに向いてるなと思った。旅先での偶然の出会い=映画館でたまたま一緒に同じものを見てる観客。って構図もどこか近いものがある。(良い場合も悪い場合もあるっていうのも同じ)
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