ノストロモ

コンパートメントNo.6のノストロモのレビュー・感想・評価

コンパートメントNo.6(2021年製作の映画)
4.0
フィンランドといえばアキ・カウリスマキの作品が自分は好きなのだけど、画面の雰囲気やテンポがやはり同国の映画だなと感じる。
90年代を舞台にしているという事で、どいつもこいつもやたらに煙草吸うのが何だか懐かしかった。冬場のロシア中心部から、さらに極北に向かっていく列車の車窓の雰囲気。景色は白くてほの明るいが同時に全部薄暗い、みたいな感覚が映画全体に満ちていて、それが冷たくも明るすぎず暗すぎずで心地よい。
人物達の背景描写が、特に男性側に対しては極力排除されており、それによって余計な感傷や情緒がまとわりつくことのないスッキリとした物語になっているのは非常に好感が持てる。ただそのせいで男性が女性にとってあまりに都合の良い天使化しすぎている点と、その割にオチは余りにもベタ且つ感傷的な流れである事にはやや疑問が浮かんだが、基本的には静かで淡々とした作品であり、そもそも冒頭に書いたこの雰囲気が好みな人であれば、まず見て後悔はしないだろう良作。

夜、列車最後尾の窓際に二人で立って、次々に遠ざかっていく雪景色の線路を見るともなく眺めながら静かに話をするシーン。美しかった。
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