Monisan

コンパートメントNo.6のMonisanのレビュー・感想・評価

コンパートメントNo.6(2021年製作の映画)
3.9
観た。

気になっていた映画。
モスクワにいるフィンランド人大学生がムルマンスクのペトログリフ(岩に描かれた絵)を見に行く旅。
主人公の彼女が大学生に見えなかったので、しばらく大学で学んでいるという台詞や設定が分かりづらいと思ってしまったのは失礼だけど…あった。
ロシア人の彼にも言われたけどずっとしかめ面なのもそうさせたのかも。

長距離列車の客室という密室で、第一印象が最悪の他人と出会う、そこから徐々に相手を理解していく。
こういう物語の流れは一つの定型だとは思う。ただ、この狭くて硬そうで極寒の中を進む列車の客室だと、その振り幅も大きい。

90年代のロシアの激動の時代、という背景も知っておかないといけなかったのかな。
リョーハは出稼ぎから戻ったら事業をやる、と。ただ何の事業かは具体的には無さそう。

停車駅で老婦人を訪ねる場面。ようやく彼女も楽しそうに。老婦人は良い味だしてたな。女は賢いのよ、と。存在や話し方に真実味があり演技に見えない。

同じフィンランド人を客室に入れてあげる。ギターを弾きつつ、孤独を語る彼は印象良い。でもそんな奴に限って大事なビデオカメラを…これもお決まりのパターンではあるけど、動く列車の中では何も出来ず、ただ悲しい。

ムルマンスク到着も近くなり、お祝いをするラウラとリョーハ。ここで頑なに住所交換を拒むリョーハ。この辺りはヤマアラシのジレンマ的な事か。
結果としてキスをする2人。なんかこそばゆい。

ペトログリフは見に行けず、彼女である教授には早々に電話を切られ。本当に付き合ってるのかな、教授にとっては軽い気持ちだったのかな、なんて思った。
再びリョーハ登場で、いざペトログリフへ。これは見られたのか、大した事ない、がっかり現場だったのか、早々に終了。
猛烈な吹雪の中、はしゃぐ2人は顔真っ赤になりながら楽しそう。でも、いるだけで辛そうな過酷な撮影現場を想像してしまう…

リョーハのお手紙とラウラの晴れやかな表情。
お話自体は既視感はあるけれど、舞台や時代背景、宗谷岬どころじゃない極寒の北の地を目指す中で、ラウラのちょっとした笑顔が印象的な良きロードムービーでした。

ユホ・クオスマネン、脚本・監督
Monisan

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