うえびん

コンパートメントNo.6のうえびんのレビュー・感想・評価

コンパートメントNo.6(2021年製作の映画)
4.3
ここではない 何処かへ

2021年 ロシア/フィンランド作品

時は1990年代

モスクワ
→サンクトペテルブルク
→ペテロザボーツク
→ムルマンスク
総移動距離約2000kmのロードムービー

舞台のほとんどは寝台列車
車中の6号コンパーメント
ロシア大陸を南から北へ縦断する

フィンランド人学生のラウラ
ロシア人労働者のリョーハ
偶然に出会った二人の物語

ラウラが眺めるものが変っていくのがいい

列車の車窓から眺める景色
銀世界
朝陽や夕陽
実際にロシアを旅しているような感覚は
「世界の車窓から」の長編のよう

リョーハの印象
モスクワの思い出を捨て去った
(失った)とき
彼への印象がガラッと反転したのだろう

ラウラからリョーハへ
印象の伝え方がいい

ラウラの目に映る外面世界が拡がり
ラウラの心の中の内面世界が拡がる

その過程が
言葉を介さず描かれているのが素晴らしい

ここではない何処か

外の世界の目的地には
辿り着けなかったけれど
内の世界に辿り着いた場所

言葉少ないリョーハ
彼が聴き放つ一言が強い余韻を残す

その伝え方もまた素晴らしい
うえびん

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