ラピュタん

ストーリー・オブ・マイ・ワイフのラピュタんのレビュー・感想・評価

4.5
ポセイドンとレア・セドゥの航海

クラシカルで重厚な雰囲気の魅力あふれる169分をお望みなら、こちらはいかが?


美しい妻を娶った、船長の苦悩の物語…
ですが特殊な状況の昔のお話?ではなくて
陸棲の私たちのハートにも響いてきます

船長は海の上では絶大な存在です、が
妖艶な妻との生活が始まってからが悩ましい

主演のハイス・ナバーは、ポセイドンを思わせる程の堂々たる大男で、初老の女流監督は彼の魅力にじーっくりと迫ります
彼はレア・セドゥの魅力に負けないほど、よいのでは(ギリシャ彫刻だなあ、彼は…と何度も)

自信と実績があったはずの彼は嫉妬してしまう、疑ってしまうのです
 「もしもわたしに息子がいたならば、
  …助言には、あの朝を語るだけでいい」

この映画は、男と女の間に存在する

〜〜〜 壁 〜〜〜

がテーマなのかな

最初に提示される、海と甲板の水平な分割画面は象徴的でしたし

ユーモアは少なめですが、固くなり過ぎず船長の抑えた演技と全体のバランスが保たれていて
チクチクと胸を刺されつつも享受できる深い味わいに満ちた贅沢な佳作です

60代の名匠が、金熊賞作品の後で撮ったというだけでも気になりますが、
今なぜこの作品?を考えたくなります 
その訳はきっと…
さまざまなレベルでの社会の分断の根底にある問題こそ、配偶者間の分断なのではないか?ということで、この夫婦の物語に焦点を絞ったのだ…と妄想しています


家族やカップル向けではないかも
大学生以上かなあ、
既婚者はぜひ
もちろん、映画好きな人には◎ 

⭐️思わぬ収穫は謎のマルタの男  
 セルジオ・ルビーニの魅力
 彼はどうして成功したのか、も深読みできそう
⭐️美しい街並み
⭐️ブルックナーの交響曲『ロマンティック』
 あんな所でそんな風に!
⭐️劇伴に歌は入らない
 器楽だけで雰囲気を盛り上げ、重厚感UP
⭐️健気で真っ直ぐな少女からの恋慕も…
 自分なら…という風に素直に観てしまう
⭐️夫婦という近接のみでは
 他者の理解は深まらないのかも
⭐️一人称の物語のため、セドゥの謎は…
 謎は深まっていく一方でミステリ要素の味付けも
 でも本当の謎は、配偶者双方の存在なのかも

 最後まで飽きることなく愉しむためにも、一応ハンカチのご準備をお忘れなく
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