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フォルス・ポジティブの708のネタバレレビュー・内容・結末

フォルス・ポジティブ(2021年製作の映画)
3.2

このレビューはネタバレを含みます

「A24の知られざる映画たち presented by U-NEXT」より。配信で観ました。

ネトフリで「我々の父親」っていうブラムハウスが製作したドキュメンタリーがあったんだけど、不妊治療をしていた医師が自分の精子を使って何人も出産させていたというおぞましい事件を取り上げた内容で、描き方もサスペンスやホラーそのものでした。これもまさにそれです。もしやモチーフにしてますか?

かつて007のジェームズ・ボンドだったピアース・ブロスナンが、気持ちの悪い怪しい不妊治療医ジョンを演じてます。治療中の発言も手指の動きも本当に気色悪い。自分が女性だったらこんな医師に自分の体を預けたくはないです。ルーシーの旦那のエイドリアンが自分の師であるジョンと異様にベタベタ親しいのも、代理父という部分での精神的結束があるからこそ。ルーシーがエイドリアンとジョンが愛し合う夢を見てしまったのも納得です。

仕事であれ、本来女性のものである妊娠&出産であれ、すべて男にまかせておけと言わんばかりの男性優位な社会。せっかく授かったお腹の双子男児と女児3人から、女児を間引くかのようなジョンからの提案も、妊婦の体や子供を思いやるというよりは、男性優位で家父長制な社会を継承していくためのエゴにしか思えずおぞましい。

妊婦ってホルモンバランスや脳の変化によって得体の知れない不安に襲われて、どこからが現実で、どこからが幻覚かがわからなくなっていく部分もあると思うんです。「ローズマリーの赤ちゃん」はそこの描き方がかなり上手かったのですが、この作品における幻覚もしくは夢オチはすぐに見抜けてしまって残念でした。あ、これは現実じゃないだろうなというニオイが漂ってしまってる感じ。

悪くはないんだけど、なんとなく突き抜け切れない仕上がりに思えました。男性優位社会や家父長制の心地悪さもピーターパンのくだりも、もうちょっとやり方を変えたら鋭さが出たのかも。

ピアーズ・ブロスナンが診察台の上でボコボコにされるのは最高でした。
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