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崖上のスパイのICHIのレビュー・感想・評価

崖上のスパイ(2021年製作の映画)
4.2
冬のハルピンが舞台なので外はひっきりなしに雪が降っているのだけどその雪の質感が素晴らしい。列車の客室での乱闘シーンも割れた窓から吹き込む雪が部屋を舞う。そして雪が降っているので必然的に人々は帽子を被るのだがその帽子がいい。周囲から監視された車の中で敵を殺したスパイは帽子を交換することで周囲を欺く。黒で統一された帽子やコートはスタイリッシュでハルピンの街並みも重厚感があってスパイ映画的なカッコ良さを堪能できる。秘密の連絡が書かれた紙を車の中で燃やす場面をワンショットで撮り切ったシーンの、その指捌きも素晴らしい。若い女性のスパイの顔がアイドル的すぎるとか、親子の物語がコテコテすぎるとかチャップリンの「黄金狂時代」を観て笑う観客の中笑ってないスパイの表情がヒッチコックの「見知らぬ乗客」のテニスシーンを思い出させるのだけどもっと効果的に使えたはずだとか、幾つか惜しいところはあるのだけど、最近のスパイ映画の中では出色の出来だった。
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