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崖上のスパイのkojikojiのレビュー・感想・評価

崖上のスパイ(2021年製作の映画)
3.8
No.1680 監督はチャン・イーモウ

 舞台は1930年代のハルビン。監督初のスパイ映画。イーモウ監督が写しだす雪の街。緊張とスリルと叙情が交差する世界は、これまでのスパイ映画とは一味も二味も違う、独特の世界に迷い込んでしまう。どのカットも彼の感性を感じる。雪とタバコと帽子がいい。

 1934年、ソ連で特殊訓練を受けた男女4人のスパイチームが、極秘作戦「ウートラ計画」を実行するため満州国のハルビンに潜入する。
 彼らの目的は、日本軍の秘密施設から脱走した証人を国外脱出させ、日本軍の蛮行を世界に知らせること。しかし仲間の裏切りによって天敵・ハルビン警察庁特務警察に計画内容が察知され、リーダーの張憲臣が捕まってしまう。
残された3人と彼らの協力者となった周乙は、どうにかピンチを切り抜けるべく奔走するが……。

 裏切りに次ぐ裏切り。誰が敵か味方かわからないストーリー展開は、予測がつかない。それをイーモウ監督が独特の感性で味付けする。その味わいにずっと押されてしまう。

 この映画を観てイーモウ監督の女性の好みがわかった気がした。
「初恋の来た道」、「lovers」の主人公チャン・ツィイーはこの物語の主人公リウ・ハオツンにそっくりと言うか、間違いなく同じタイプなのだ。すごく可愛い。彼女の存在はスパイとしてはなんだか異様な気がするが、彼女がいないと物語は全く面白くないものになっていただろう。それだけ重要な存在だ。

 彼女をこんな状況に追い込み、こんな表情をさせて、こんなカットを取りたい。監督がそう思ったかどうかわからないが、そんなふうなことを感じた。

 ただし、観終わった後現実に戻って、映画を客観的に考えてみると、スパイ映画としては、少し物足りないかもしれないと感じた。
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