頭の上の赤い林檎

ローラとふたりの兄の頭の上の赤い林檎のレビュー・感想・評価

ローラとふたりの兄(2018年製作の映画)
4.4
 これは思わぬいい出会いだ。何回みても味わえるかもしれない。2018年公開なのに全く知らなかった。

 タイトル通りローラと2人の兄の話。フランスの両親を亡くした恐らく30代後半のローラと47と49?もピエールとブノワ。ローラメインではなく、3人それぞれの恋愛、そして家族愛を描いた作品。

 海外の作品を見るたびに毎度思うだが、日本よりも家族とのつながり、絆を強調した作品や、シーンが多いと思う。日本では恋人と過ごすのを是とするクリスマスも、たいていの国では家族と過ごすのが当たり前とされているくらいだ。今作では、そんな日本と違った家族との関係性を色濃く感じた。

 特にそれがよかったシーン。終盤兄ブノワが弟ピエールが失業したことを誰にも言えずにいた。そんな中、2人きりの車中でブノワがピエールに対し、お前が失業したことなんて誰でも知ってるわ!あの信号渡るおっさんだって知ってるぞ!迷惑なんて何十年も前からかかってる!いいか、俺はお前の兄なんだ!
という趣旨のことをあらい運転の片手間みたいな感じで力強く言うシーンがある。
 これが個人的にはすごくよくて、自分が悩んでたことが大したこたじゃない、何でも相談していいんだとピエールに思わせるような最適解を、考えもなしに直感で行っている感じが腐れ縁の家族って感じを最大限表現できていて素晴らしい。
 ピエールとブノワが作中ずっとしょうもない言い争いを繰り返していながら、こういう大事な局面で息ぴったりになったり、挨拶は習慣なのか絶対に忘れなかったり、ローラを思う気持ちが不変なのも凄いよかった。

 今作では離婚、再婚、妊娠、不妊、転職などの中年ならではのリアルな悩みが散見する。

 妻、夫、職場、友人。共生社会で生きていく現代では確かに欠かせない。が、離れる時はあっけなく離れていくもの。三兄弟もその2面生の悩みに直面していた。
 家族はいくら衝突を繰り返してもほとんどの場合離したくても離せない。先述した兄2人のように。そんな数奇で、変え替えのない関係性。三兄弟はその最たる例なのだろう。素晴らしかったです。