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牛首村のRAMPOのレビュー・感想・評価

牛首村(2022年製作の映画)
2.1
“村”シリーズ第3弾ということで、半ば義務感も手伝い、結局観てしまいました。決して“こき下ろし”たくて観てる訳じゃないんですけどね。
でも…、やっぱり満足感には程遠い、最早、突っ込まれるために作ってんのかなぁと感じるくらい。

本作に限れば、冒頭の衝撃はなかなか良い感じなんです。
またそれに続くオープニングも結構意味深でソフトフォーカスな映像も雰囲気が良くて、期待が高まります(まぁでも、このシーンのお陰でオチも想像できちゃいますが…)。

でもやっぱり駄目ですね。ストーリーの芯がきっちり通ってないというか、個々のシーンが全体として今一つ整合が取れてないというかチグハグ。
何より恐怖演出が全く怖さを感じないので、ホラーとして致命的。
このジャンル見過ぎてるせいかもしれないけど、今の本作ターゲットの視聴者(おそらく10代〜20代の若者?)はこの位でも「怖い」って思うのだろうか。

まぁね、霊の描写が拙いのは前作からの定番なので、寧ろ様式美的に受け止めるにしても、そもそも「牛」の頭ってのが、どんなにグロく造ろうと誰もが知ってる「牛」な訳ですから(逆に作り込めば込むほど作り物っぽくなるので…)。
それに実は「牛」自体は本質的に関係ないし(馬でも豚でも成り立つ。何なら犬でも猫でも)。
つまり怖さの本質は別のところに置くべきなんだけど、そこら辺がまず弱いんですね。

本作の怖さのポイントは“双子”が“忌み子”ってことだと思いますが、たまに生じるから特別な事象=不吉の兆候なんであって、全員が全員そうなら普通=日常じゃないですか。
そのそもそもの過去の因習にしても、いつの話?爺ちゃん婆ちゃん存命の頃ってもう流石に昭和だよね、ましてや主人公の片割れ犠牲にしたくなかったから離したって、オイオイ現代まで続けてるのかよ!って話で。
つまりリアリティあるかの様に描いてるつもりで、荒唐無稽過ぎてリアルのカケラも感じないんですね。

あと、舞台設定として話題になった現実に存在するらしい宿泊施設の廃墟、これが“村”とどう関わってるのかもよく分からない。せめて“穴蔵”の真上に建設された物とかなら、なるほどとも思えるのですが、そんな設定でもなさそうだし。

主人公はある瞬間に過去に飛ばされるんだけど、その瞬間に唐突に「牛首村だ!」って、え?ってなる(その集落って“牛首村”って名前だったっけ?)。双子の頭数揃えれば怖い訳じゃないし、といって笑えるシーンでもないし。

まぁお約束なんだろうけど、関わった者が次々と死を遂げ、にも関わらず、主人公の双子の片割れは(最初に行方不明になったにも関わらず)最後まで無事って余りにご都合主義的でうんざりするし、それが定番の“お約束”に繋げるためってのは、最早、陳腐ささえ通り越してる。

全体としてみれば、良い感じのシーンもあるにはあるんです。怨霊のメイクもグロいし、役者の演技も悪く無い、穴蔵の中の造形もグロくて良い。だけどそれだけ。
何でこんなに一体感が無いかなと考えて、本作が「呪怨」の清水監督作であることを改めて思い出した。
そうか、この人は全体的なストーリーラインより先に見せたいシーンがあって、それを繋ぎ合わせてるだけなんだなと。

思えば「呪怨」もショッキングなシーンを細切れにし、時系列をバラかすことで、視聴者側がそれを自身でパズルのピースを組み上げる様に並べ替える事で物語の全体像や真相が分かるって構成(パート毎の繋ぎは視聴者が脳内補完)で、それはその当時のホラーとしては斬新で、面白く感じたんだけど、要するにこの人は連続して纏まったストーリーを撮れない人なんだなと理解した。

最後に。話題のキムタクさんの娘Kōkiさん。
まぁ初主演としては頑張ってるんだと思います。が、ストーリーが上記の通り突っ込みどころ満載なのと、やっぱりご両親の顔がチラついて劇中の役に感情移入できず。偉大な親を持つのも考えものですね。

“村”シリーズ3部作、きっとファンもおられるでしょうし、怖かった!面白かった!その他色々評価する方々もおられるでしょう。それらを否定するものじゃありません。最後まで私の好みには合わなかった、それが本シリーズ全体を通じた感想です。
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