映画ネズミ

健太郎さんの映画ネズミのレビュー・感想・評価

健太郎さん(2019年製作の映画)
3.7
向いている人:
①自宅を舞台にしたサスペンス映画が好きな人
②『ヘレディタリー/継承』が好きな人

 フォロワーになっていただいた高木氏さんこと高木駿輝監督の短編作品です。サスペンスが好きな私好みの良作でした。

 ストーリーは単純で、ある家に「健太郎さん」なるおじさんが同居してきて、家族が苦しむという不条理劇です。ストーリー自体はオーソドックスなホームインベージョンもの(『ファニーゲーム』みたいなやつ)です。

 普段、日本のインディーズ映画にあまりノレない私でも、本作は心地良く見ることができました(サスペンスなので、ストーリー展開は心地良くないですが💦)。冷たい照明、テンポのいい編集、手持ちカメラ特有の揺れをできるだけ排した撮影。

 どれも私好みでしたし、できるだけセリフに頼らず、映像で物語を伝えようとする姿勢も好感が持てました。上映時間35分、最後まで映像で魅せきる力を持っている監督だと思います。

 途中に仕込まれたディテールや小ネタも、様々なホラー&サスペンス映画を研究されていることが分かります。車の中からの視点でのショックシーンはお約束ですがビックリしてしまいました。

 他にも、家の中の不気味な雰囲気、食卓シーンの居心地悪さなどは『ヘレディタリー/継承』風かなと思いますし、夕焼けの撮り方は『セブン』っぽい。『聖なる鹿殺し』要素もあるなど、過去の名作をサンプリングしながらも、うまくストーリーテリングに組み込んだ巧みな作劇だと思いました。

 個人的には、「戸口に立って顔を半分だけ見せてこっちにガンつけている図」が強烈に居心地悪くて怖いと思う性質なので、本作は「もう許して~」と思うくらい怖かったです(欲を言うなら、あと数センチ顔が見えない方がもっと怖い!)。

 俳優陣の演技も素晴らしく、特に「健太郎さん」を演じた龍坐さんの演技は絶品でした。もういるだけで気持ち悪い!

 見終わった後、家族と健太郎さんが食卓に揃っている光景が頭から離れない、地獄のようなホームドラマで、存分に怖がらせていただきました。後半の展開は賛否分かれると思いますが、初監督作とは信じられない完成度でした。

 監督の次回作が楽しみですし、本作を見る限り、監督の資質は長編に向いていらっしゃると思いましたので、長編作品になるとどうなるのか見てみたいと思いました。

 怖い映画が苦手な方には不向きですが、そうでない方にはぜひ見ていただきたい作品です。

 久々に、コメント欄にネタバレフィルターを付けて、ネタバレの感想を呟きたいと思います。
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