S田

健太郎さんのS田のネタバレレビュー・内容・結末

健太郎さん(2019年製作の映画)
4.8

このレビューはネタバレを含みます

(※後半はストーリーの重要なネタバレに触れています)

短編邦画ホラーが観たくなったので以前見かけたけど気持ち悪い感じの作品かもな…と少し観るのを躊躇していた作品
タイトルを思い出せず検索したら学生作品と知り学生がこんなほの暗くて派手さにかける雰囲気の作品撮ったの!?と不思議な気持ちで視聴スタート

35分と短いながらも無駄な展開がなく、作品の仕掛けの紐解き方がラスト周辺でいや~な感じに勢いよく解放されてくのが気持ちよかったです、いや気持ちは悪いんですけど

4人家族に混ざる他人、ぎこちなくきまずい空気で最初は異物としての健太郎さんが何をしでかすのか、この家族が何をしたんだよという家族視点から始まるのですが、
子供をないがしろにしながら健太郎さんに異様に取り入ろうとする両親、両親に習う訳でもないが強く反発ができるわけでもない長男、トレーラーでは「無垢な妹」と称されていたが健太郎さんになつく妹のそれぞれの立場が乖離していて、健太郎さんがこの場にいる理由が浮いては消え、誰に感情移入したら良いかわからなくなる中盤は非常にスリリングでホラーとして面白かったです

家族の違和感が大きくなるにつれ、両親の毒親的言動にはかなりヘイトが集まり、それをちくいち刺してくる健太郎さんに「あれこの人いい人なんじゃ…」という愛着が湧いてきます
居なくなられることを恐れる両親に、もはやぬらりひょんか座敷わらしかと雑念が入りはじめていたんですがここからはじまる種明かしが二弾三段仕込みで溜まった両親へのヘイトを発散させてくれるのが好感もてました

健太郎さん親子を轢き逃げし各々自分の事しか考えていない自分勝手な両親、臆病な息子、ひとり手を差し伸べた娘
妻の墓参り?中に1人の家族の娘を殺され、自身も重体の中轢き逃げ家族の家を突き止め家に入り込む健太郎さん
本当の登場人物の顔が見えたところで終わりでも良かったのですが、私が特に気に入ったのはラストシーンで、

ここまでは娘と健太郎さんの関係だけが良好なのは、
ただ幼いから、そして亡くした娘を重ねてか重症の自分に優しく声をかけたからかといった見え方だったところ
「最初から崩壊しているこの家族から自分を守るため、健太郎さんを味方に付けることを選んだ幼い娘」
という人物像が明かされて終わるところが最高でした

住所の特定出来るハンカチを渡したのも、最初から彼を招き入れるつもりがあったのかもしれないとさえ思える目配せ、
満面の笑みで娘に視線を返し、実は最初は綺麗に食事をとっていたが暴力的な躾を受けていた娘のために、冒頭のように犬食いをして誰も娘に口を出せない形にしていたと判明するのが爽快すぎました

一周忌を越え、「本当の家族との決別」をし4人家族の元へ帰ってくる健太郎さん
あえてこの後どうなったか描かないのが粋です

ぜひこのチームでこれからも面白いものを作っていってほしいと思える快作でした
S田

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