イチロヲ

悦楽のイチロヲのレビュー・感想・評価

悦楽(1965年製作の映画)
4.5
片思いの娘(加賀まり子)を庇護するべく犯罪行為に手を染めた青年(中村賀津雄)が、失恋の痛手と捜査の手に慄きながら、悦楽の限りを尽くそうとする。山田風太郎・著「棺の中の悦楽」を原作に取っている、エロティック・スリラー。

片思いの娘の結婚報告により燃え尽き症候群に陥った青年が、他人の汚職金を利用してムラムラとイライラを発散させる。「どこぞの女と高額の愛人契約を結ぶ→愛人の人間ドラマに取り込まれる→愛人と決別する」の流れをリピートさせていく手法。

高級クラブのランカー嬢(野川由美子)のパートではモダンな洋室、田舎暮らしの訳あり婦人(八木昌子)のパートでは情緒あふれる日本の古民家、真の愛情を模索している元看護婦(樋口年子)のパートでは北海道の沿岸部。

当時の若手女優が、様々なシチュエーションで個性を振りまいてくるため、役者力にぐいぐいと牽引させられる。説明口調により帳尻合わせを繰り返すところが気に掛かるが、猜疑心を駆り立ててくる、「後に引きずる系」としてはレジェンド級の逸品。
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