一人で勝ち取った名誉だと勘違いするな！

「男たちの出世争いは、その妻たちによる水面下での魔法合戦の結果でしかない」ということを大真面目にSFホラー仕立てで描いたフリッツライバー『妻という名の魔女たち』の二度目の映画化作品。ジェンダー本質主義に根差しているため、現代だと色々と問題のありそうな内容ではあるけれど、偉そうにしている男どもはその実、女たちの手の上で踊らされている傀儡なんだとさえ思えてくる良質なホラー映画でした。

大学教授の主人公は超合理的な科学の信奉者で迷信なんて大っ嫌い。今は学年主任の座を巡って出世争いを繰り広げている。ある日、妻がブードゥー魔術を日常的に行っていることを発見。主人公は、「そんなアホみたいな迷信はやめろ！」と、妻に呪具を全て捨てさせるも、その瞬間に自分を告発する電話が鳴り響き、次の日には車に轢かれそうになり、それ以降、出世争いも何もかもがうまくいかなくなる…。

もしや妻は魔術で自分を守ってくれていたのでは…と感づいた主人公は、疑心暗鬼ながらも権力争いの裏側に渦巻く『妻という名の魔女たち』の争いに身を投じていく…って感じの内容。

主人公は自分への絶対的な自信からくる傲慢さに満ちていて、その信じる科学でもって迷信を頭ごなしに否定する。本作における科学-迷信の対立関係は、（本質主義に基づく）男性性-女性性をそのまま体現し、「I do not believe」→「I do believe」へと、一瞬だけ映る黒板の板書によってさり気なく伝えてくる主人公の心的歩み寄りが、科学という傲慢を脱ぎ捨て、愛情という宗教・迷信とも呼べる最も不確かなものへの信仰を主人公が手にするまでを描く。

それでも、本作は魔術が本当に存在したのかは最後まで明示しない。というよりそこはあんまり重要視していない。妻は夫に頭ごなしに否定され全く信用されなくても、自分の命と身代わりにしてまで夫を救おうとする。この夫婦間の差異が本作のミソ。

妻を救うための命を賭けた（道中で死を挟む）旅路は、科学への信仰を体現する綺麗で豪華な自宅から、蜘蛛の巣だらけで見窄らしい廃屋の地下へと辿り着く。それは、科学で外見（自宅）を取り繕い、肝心の心が伽藍堂（廃屋）であり、真に弱いのは自分であることを主人公が自覚するまでの過程。そして、それは科学は最高！迷信はクソ！っていう価値観（＝本質主義に基づいた男尊女卑的価値観）によって、その伽藍堂（廃屋）に妻を閉じ込めていたのだという自覚をも手にすることであり、最終的に手にするのは相手への尊重という、現代では色々と問題ありつつもすんごく真っ当な帰結が素晴らしい！

原作とそれなりに忠実に作られてるのだけど（一回目の映画化の『Weird Woman』は設定だけで別物）、魔術が解けた瞬間に主人公を襲う周囲の悪意の波が弱かったり、妻を狙う攻撃も緩かったりと少し毒抜きされてる感は引っかかった。それと映画タイトルにもなってるワシの像の異様さが原作ほどうまく伝わってこない。最終的にBIG監督ばりの巨大ワシになって襲ってくるのはサイコーだったけど！😂

ターナーの『悪魔の呪い』と良く比較されてるのを見かけるのだけど、監督の力量的には負けてると思う。それでも的確な照明と確かなサスペンス演出が光ってたし、面白かった。アイラレヴィンの小説よりも前の作品であることを考えると、『ローズマリーの赤ちゃん』『ステップフォードワイフ』両方に影響を与えてる気がする。面白いからリメイクしてほしいのだけど、めちゃくちゃ叩かれそうだから無理なんだろうな…😭

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