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アイス・ロードのsomaddesignのレビュー・感想・評価

アイス・ロード(2021年製作の映画)
3.5
圧倒的テレ東感! B級映画の王道を行く午後ローアクション!

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鉱山の事故により閉じ込められた作業員たち。救うためには発破作業が必要だが、充満したメタンガスに作業を阻まれる。ガスを抜く30トンもの装置を運ぶには、鉱山までの最短ルートを巨大トレーラーで突っ走るしかない。しかしその最短ルートとは「アイスロード」と呼ばれる湖に張った氷の上を走破する道。スピードが早過ぎても、遅過ぎても氷が割れて水没してしまう危険なミッション。坑道の酸素が尽きる30時間以内に装置を届けるべく、命がけでトラックを走らせるのだが……。

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ブロンソン〜セガール〜ヴァンダム…と続く午後ロー名優の系譜に、いつの間にか名を連ねていたリーアム・ニーソン。大英帝国勲章まで授与された人なのに、近年すっかりスティーブン・セガール化。

つい最近もリーアム・ニーソンが雪景色の映画出てた気がして、いよいよ記憶が怪しくなったかと思ったら「スノー・ロワイヤル」だ。近年リーアム・ニーソンのチャールズ・ブロンソン/スティーブン・セガール化が著しい。全部同じ映画、全部結末が予想ついちゃう、そして予想通りの結末問題。
だがどうだろう、世代に一人か二人くらいそういう映画スターがいたっていいじゃない。テレ東枠として。

下敷きとなった50年代のフランス映画「恐怖の報酬」は未見。ていうか今作の復習するまで、そういう映画があったことすら知らなんだ。

基本的には炭鉱に閉じ込められた作業員を救うタイムサスペンスと、無謀なミッションに挑むアクション映画だけど、根底にあるのは巨大企業の利益至上に踏み躙られる人間性。ケン・ローチ監督の「家族を想うとき」をテレ東アクションにしたらこうなる的な。ホワイトカラーに虐げられ続けたブルーカラーが、誇りを持ってキツーイ反撃の一発を食らわす。あの一発を見るための109分。

ローレンス・フィッシュバーンの物語からの去り方が雑で面白い。仕組まれた事とはいえ、直接的な原因が「うっかり」て😅
今作イチのグロシーンっていうか、貨物やトレーラーもピンチだけど、それ以上にジム自身も第ピンチ。見ていて「あわわわわ………」って人体損壊描写に動揺しちゃった。

退役軍人でPTSDに苦しむ弟を演じたマーカス・トーマス。ちゃんと腕の立つエンジニアだったり、葛藤や優しさを見せる奥行きとバックボーンを感じるキャラ造形が素晴らしく、少ない表情の奥に微少な感情の変化を感じさせる演技が素晴らしかった。
それだけにあの退場の仕方が、本当に適当で必要なシーンだったのか謎。

俺得はホルト・マッキャラニー。最初にガス検知器の異常を見つけた作業監督ランパード役で、Netflixの「マインドハンター」で俺にお馴染み。冷蔵庫みたいなずんぐりむっくりした体型と強い目力。厳しいけど頼れる作業監督っぷりが滲み出るサスガの名バイプレイヤーっぷりが光った。いざとなったら、他の作業員全員に暴力で挑まれても勝てちゃいそうな雰囲気も好き。


VFXが近年の映画レベルからすると若干ショボいけど、いっそそのチープさすら愛おしい。実際に厳寒のカナダ・ウィニペグ湖で撮影しただけある大迫力。撮影のためにホントに2キロ近いアイスロードを作ったそう。撮影も「グラントリノ」や「J・エドガー」らで知られるトム・スターンだけある。荒涼した自然風景を、硬質でクールな質感で寒々と映像化する手腕はサスガ。

5点中3点満点のジャンル映画で、過不足なくきっちり面白かったのでこの評価。テレビサイズで楽しむのもいいけど、こういう映画こそ映画館のスクリーンで見る価値高い気がする。

75本目
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