このレビューはネタバレを含みます
1999年にスペインで起きた少女に対する殺害事件を追ったドキュメンタリー作品。
事件そのものもさることながら、人間社会の恐ろしさを如実に表した事件だと感じました。
殺害された少女たち、以前の事件で被害に遭った女性たち、そして無実の罪を着せられ地獄の日々を余儀なくされたドロレス。
恐ろしいのが、この中でドロレスを地獄に突き落としたのは事件そのものの犯人ではなく、警察やマスコミ、そして民衆であるという事。
これはもうスペインだろうが日本だろうが変わらない、人間のもつ凶暴性の発露なんだろうなと、人間そのものが怖くなります。
例えば事件が起きると、無関係な人間が「遺族の気持ちを思うと」とか「被害者の事を考えると許せない」などと言うのをよく見かけます。
だけどそれは本当に正義の心からなのか?とよく疑問に思うのです。
それってただ、誰かを攻撃する免罪符に被害者を利用しているだけなんじゃないの?って思うんです。
この事件もそうですが、日本でもマスコミの扇動と一般人の無責任な思い込みが数々の冤罪事件を生んできました。
それは証拠の有無なんて関係なくて、一般市民は「マスコミが言ってるんだから」、マスコミは「警察が言ってるんだから」と、他者に責任を肩代わりさせ、その攻撃欲求を満たすために無責任に叩くという、もはやただのイジメでしかない事が平気で行われるわけです。
そして冤罪が生まれるという事はつまり、真犯人を野放しにするという事と同義な訳ですが、そんな恐ろしい事実すら無視され、狂ったように執拗に生贄にされた人を攻撃し続ける。
そうして起きた第2の事件においては、警察やマスコミ、無根拠にドロレスをバッシングしていた市民が犯人に手を貸したと言っても過言ではないと思うのです。
そして全てが明らかになった後も誰一人ドロレスに謝罪していないという現実に、人間社会の冷酷なまでの恐ろしい面が表れているように感じました。