くもすけ

春原さんのうたのくもすけのネタバレレビュー・内容・結末

春原さんのうた(2021年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

いよいよアピチャッポンめいてきた。三作目にしてはっきりゴースト・ストーリーにふってきたかとおもいきや、彼女のほうはさりげなく現れても、とくに何もしない

美術館では、文字通り何も映さない。むしろアートはもっと身近にある。自筆の垂れ幕やランチの課題で、じぶんの居場所を自由に塗り替えていく。夜と昼とでまるで趣が違って見える。スクリーンを3枚並べたアイディアがよい。このシーン終わって髪も塗り替えて、もう大丈夫、と思える。いや、むしろまわりのとりこし苦労だったとさえ。

例によってカメラで撮る人たちがおもむろに映されるが、特別な理由もない、監督の生理的な癖のようなものか。バイクもでてくるが今回は割と大人しい。マスクの芝居がちゃんと根付いて自然に見える初めての映画。

こういった仕掛けにくらむれば、感情の高ぶる芝居は実にそっけなく撮っている。自宅の開け放した窓から扉から、風といっしょに子どもたちの勝どきの声が聞こえてくる。

うっかり見てしまうと、あれ、誰が春原さん?となる。冒頭出ていった常連客がそうかと思ったのだが、違うようだ。
で家具その他を置き去りに、押し入れからリコーダー、ついでにかつての恋人か友人か妻が訪ねてきて、どういうわけかサチの歌。手に持った弦が奏でられることもなくアカペラで、あとを追いかけてサチも歌う。
その後友人が訪ねてきて転居先不明出戻りのハガキを燃やして笛を吹く。
「ひかりの歌」でも思いがけない小景が歌へと繋げられていたが、本作の「歌」のシーンの曖昧さは、原作の歌のそれに由来するところも大きいのか

インタビュー見るとまるで妖精のような監督なので、これからも是非勝手に、勝手な映画をとりつづけていただきたい