great兄やん

春原さんのうたのgreat兄やんのレビュー・感想・評価

春原さんのうた(2021年製作の映画)
5.0
【一言で言うと】
「やさしさに溢れるように」

[あらすじ]
美術館の仕事を辞めた24歳の沙知はカフェでアルバイトを始め、常連客に紹介されたアパートの部屋に引っ越す。沙知はそこで新しい生活を始めるが、心の中にはもう会うことのできないパートナーの存在があった。

一瞬で好きになってしまった。120分どこを切り取っても優しくて、愛おしい映画だった。
まさに“一目惚れ”に近いあの感じ...上映終了ギリギリで滑り込んで観に行きましたが、本当に観て良かったです。マジで好き。付き合ってください(錯乱)

とまぁそんな戯言は置いておくとして、とにかくビックリするほど何も起こらない。
『街の上で』でも多少なりともドラマ要素があったが今作に至っては皆無に等しく、まさに“THE 日常”をひたすらに切り取った作品...なんだけどそんな単純な代物ではないのが今作の凄いところ。

終始スローペースな展開ですし、寡黙な語り口で一貫されている故にストーリーが分かりにくいという不親切さがありながらも、どういうわけか全く退屈にならない。
むしろずっと観ていられるほどの心地良さを感じてしまうほど。

何故こんなにも心地良いのかは理解できないですし、なんなら理解できるできない云々の問題ではないのだろう。
彼女が見つめる先、半分ずっこに分けたどら焼き、連絡なしに突然来るおじさん、他愛もない友達との会話...その“意味”を理屈で考えさせるのではなく、“フィーリング”で感じさせるという幸せ。

普通ならば見落とすであろう“余白”の部分をあえて“見つめている”かのように描いたあの映し方...だからこそ感じる日々の美しさというか、“喪失”からの“再生”を温かく見守っているかのような“優しさ”を感じましたね🤔

特に押し入れに隠れるあの下りが一番好き。
あのシーンも特に意味は無いんだろうけど、なんだか涙が溢れてくるほど愛おしさに満ちていました😌

とりあえず“優しい”やら“愛おしい”やら言ってますが、本っ当に色々な意味で“浄化”された。日常を描いた映画の中ではある意味最高到達点に達したのではないだろうかと思わしめる一本でした。

風のささやかな移ろいと日常の生活音。BGMの殆どがそれで占めているからこそなのか、まるで風通しの良い部屋で観ている感覚に近かったですし、主人公さっちゃんのやる事なす事がもう可愛くて可愛くて☺️...

出来るならば涼しい夏にもう一度観たい今作。
確実に人は選ぶだろうけど、こういった映画は本当に大好きです😆