このレビューはネタバレを含みます
期せずして、出逢うべくして出逢う映画というものが偶にある
主人公の女性はカフェで働いていて、新居に引っ越したての様子。しかし、格子越しに水を飲み、窓の外を眺める女性はどこか物憂げ。心配そうに不意に訪れる叔父や、気を遣って話しかける周囲の様子。話が進むにつれ、何の説明もなく映るもう一人の女性の存在が際立っていく。
短歌が原作だということもあってか、空白を読み解く物語。日常に潜む不在の存在が滲み出てくるような作りのうまさ。そこに“いない”ものの寂しさを嗚咽、筆の擦れる音、リコーダー、歌で奏でて喪失を和らげる。
個人的に大切な歌が頭の中をリフレインする、詩を中央に置いた忘れられない大事な思い出のような映画。