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春原さんのうたののーのーのレビュー・感想・評価

春原さんのうた(2021年製作の映画)
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スタンダードサイズの映画を映画館で観ることがあまり無いので新鮮だった。いつにも増してフレームを意識させられた。
スクリーンの大部分を窓が占めるショットがやたらと多いが、それが終盤で“反転”を見せるのは「おお〜」と思った。
コロナ禍の扱いも印象的だった。劇中で人物はみんなマスクをつけているんだけど、コロナ禍そのものに対する言及は一度もないし、多分「マスク」という言葉も一度も発せられてない。現実世界を描きつつもそういう言葉をこの世界の中に入れたくない感覚、なんとなく分かるなあと思った。
濱口竜介作品ののスタッフが複数参加しているらしい。そう言われればちょっと『ハッピーアワー』っぽさも感じる。『ドライブ・マイ・カー』は50ページほどの短編を180分にしていたが、本作は三十一文字を120分にしていてさらにすごい。
タイトルの「春原」さんという名前が劇中でいつ、どういう形で出るかにも表れているように、情報の提示の仕方が非常に独特かつ曖昧なので見る側も結構頭を使う。でも不思議とそんなに見ていて疲れる感じはしなかった。

ただ、観客も含めて「情緒の機微がわかる、カルチャー感度の高い人」しか世界に存在しないかのような映画に感じる居心地の悪さも無いではなかった。我ながらイヤな言い方だなあ。
日本映画っぽい日本映画(是枝裕和とか濱口竜介とか)のコアなファンである外国人観客のつもりになって観たら、そういう映画の極北って感じで「やべー映画だ…」と楽しめたのでオススメです。
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