メッチ

リバー・ランズ・スルー・イットのメッチのレビュー・感想・評価

4.8
牧師の父の教えは、宗教とフライフィッシング。その2つの間にはっきりした境界線はなかった。

この物語は、1910〜20年代の自然豊かなモンタナ州の牧師の父から宗教とフライフィッシングを教えられて育った兄弟。真面目で秀才の兄ノーマンと自由闊達な弟ポールの性格は正反対。その上に、兄は都会の大学へ進学し、弟は地元の大学を卒業後実家から離れた街で働くことになり、兄弟は離れ離れになる。
だが、久しぶりに再会した2人は通っていた川へと赴く。そこでフライフィッシングをすると意識が繋がっていると思われていたのだが…、という物語。

この物語から伝わることは、どんなに親しい間柄でも分からないこともあるもので、救いの手を差し伸べても救いきることができないというものどかしさがあります。
この兄弟は、生まれ育った環境が同じで、再開したら今までのように仲が良い。でも、今生きている環境の違いやそれによって構成された物事の考え方は違ってくるからなのでしょう。それは、時間の流れによるものもそうですし、その時代背景によるものも影響してきます。いくら血のつながった家族といえど兄弟といえどもです。

そして、本作のタイトル『River Runs Through It』の意味について私なりに解釈するならば、

川は流れ続ける。そして、時は流れ続ける。
それは時に、嵐によって濁流になれば、穏やかな流れにもなる。

釣りは、そんな自然と人生の境界線が曖昧に思えてしまうほどの"もの"を教えてくれる、そんな1つの教えなのだと思います。
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