雨のなかの男

リバー・ランズ・スルー・イットの雨のなかの男のネタバレレビュー・内容・結末

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このレビューはネタバレを含みます

U-NEXTで。ロバート・レッドフォードの『普通の人々』を観た時もそうだったのだけれど、彼の映画はとても文学的で静かで、すごく胸騒ぎを覚える。美しい自然と緩やかな物語がゆったりと描かれる一方で、いつこの平穏な日々に亀裂が入ってしまうのかと常に嫌な予感がつきまとう。冒頭の川下りの場面において兄弟の「死」を予感させたあの演出が頭から離れられないんだよね。それ故にただそこに流れているだけの、神聖な川での出来事に心がざわめいてしまう。見終えてからロバート・レッドフォードすげえなあと関心した。『普通の人々』では兄貴の死が断片的なフラッシュバックで描かれることで死のイメージを散りばめていた。一方で本作はまさに川のような一方通行な時間の流れで、嫌な予感(死のイメージ)を匂わせつつも、その緊張感を最後まで引っ張り惹き付けてくれた。最後のブラッド・ピットの釣りの場面があそこまでドキドキするのはこの緊張感や嫌な予感があってこそなのよね。まだ2作品しか観てないけど、レッドフォード作品において興味深いなと思ったのは死をスペクタクルに描かないこと。ほとんど省略してると言ってもいい。登場人物たちの死は人づてに聞かされるが、その瞬間そのものを描かない。『スタンド・バイ・ミー』もそうだったな。ニューシネマの時代は死を審美的に見せるものだったけど、その省略はあまりに突然の出来事で置いてけぼりにされるような、受け入れ難い虚しさを覚える。かつてレッドフォードが演じたガンマンは爆音と共に画面が静止し、物語が終わり、その直後の死を予感させたが…死の事実を人づてに聞かされるこのやるせなさはなんなのだろう。
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