壁ノ語

アリスとテレスのまぼろし工場の壁ノ語のレビュー・感想・評価

3.9
これは昭和の残像に縋り付く現政権や社会、保守的人々への批判ではないか。。。
「変わりたくない」と前に進むことを拒み歪んだ世界に閉じこもった住人たちの物語。






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昭和の旧態依然な世界に固執し、強烈な分離不安を起こしている大人たちの "閉じこもり" に引き摺られる子どもたち。夢や希望をもつことを許されず語ることさえ抑圧される子どもたち。まるで今の日本のようだ。しかし子どもは「成長」する。いくら大人が抑えつけようと、洗脳しようと子どもは自分たちの未来のために大人たちの欺瞞を突破しようとする。多少は悪き昭和を引き摺っていようとも、時が止まり切った大人たちよりはマシだろう…と思いたい…が、果たして。。。

女子の将来の夢が〇〇のお嫁さん、ブルマ姿の女子に欲情する男子、ヒーローコンプレックス(シンドローム)の如き自己中な恋愛感情を主人公の母親に押し付ける叔父さん、髪の長い男子を女呼ばわりする男子、この物語の価値観は全てが旧態依然だ。今はもう2024年(公開年は2023年)なのに。思考・思想や価値観が成長しない、学ぶことを恐れ思考停止に陥った一部の日本の人々。。。そうさせるのは何だろうか。昭和への郷愁?プライドと名付けた劣等感?

恋愛をダイナミックに描いただけにしては監督の意図が漏れ出過ぎてる気もするのだが、、、どうなんだろう。イツミの最後の泣きは "誕生" への暗喩のようでもあったが女性版エディプスコンプレックスのようでもあった。

主人公世代が現実世界(2023年あたり)では40代くらいだとすると、大人世代は現実世界では70代くらいだろうか。イツミは現実世界では14、5歳くらい(映画の中で年齢を示していたかもしれない)。今の日本を牛耳っている老人の生きた時代は、こんなもんなんだよな…と個人的には溜息が漏れた。空が割れたエンドとは裏腹に諦めにも似た気持ちの残る映画だったけど、まあ空は割れたんだし、希望は持ちたいよなあ。。。
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