ふせん

アリスとテレスのまぼろし工場のふせんのレビュー・感想・評価

2.3
雪から雨の変化で季節の移ろいを表現しているのが素晴らしかった。終盤に増えてくる現実とまぼろしの空間が交差する場面は分かりにくく、目で情報を拾うのが難しくはあったが、息切れしない映像の美しさが完走まで引っ張ってくれた。MAPPA作品が好きなら映像的に観て損はない筈。

内容は終始うっすら漂う性愛表現が不快だった。なんといっても主人公の14歳という設定。"子供"という結果が目の前にあるのに、その意味を、重みを、考える場面があまりに少ない。
作品の時間軸の設定では仕方のないことかもしれないが、危うい雰囲気になりながらも心理的には本当にただ子供同士の純粋な恋愛でしかないので、性教育の乏しい現状において主人公に年齢の近い子には見てほしくないと感じた。もちろん家族とみるのにも向いていない。

青春ものとして消化するには生臭い印象なのだが、作品丸ごとを嫌いになれないでいる。
まぼろしの町から消えた人たち。止まった時間。親が見守れなかった子の成長。幼子を愛情から遠ざけた時間。
どれだけ二人が恋愛で幸せになろうと、取り返しのつかないものがあることが明示されている。その無常なアンバランスさは好きだったからだ。それ故に作品全体のバランスがとれずターゲット層が合致してないのではないか、とは思う。

社会や大人達がフォロー出来ずに生きづらさを抱える子供が主人公のエンタメ作品を最近よくみるけど、社会福祉に繋がって救われる作品も同じくらい流行ってほしいな。
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