ぶみ

モガディシュ 脱出までの14日間のぶみのレビュー・感想・評価

4.0
国か、命か。

リュ・スンワン監督、キム・ユンソク主演による実話をベースとした韓国製作のドラマ。
1990年代初頭、ソマリア内戦に巻き込まれた韓国と北朝鮮の大使館員等が、首都モガディシュから脱出しようとする姿を描く。
本作品を観たくて、松竹系のシネコンであるMOVIXデビューを果たした次第。
主人公となる韓国の大使をユンソク、韓国の参事官をチョ・インソン、北朝鮮の大使をホ・ジュノ、北朝鮮の参事官をク・ギョハンが演じており、皆演技は文句なし。
大使館員の脱出というと、これまた実話をベースとしたベン・アフレック監督、主演の『アルゴ』を思い出すところだが、『アルゴ』の脱出劇が、CIA工作員を架空のSF映画の撮影を理由に現地に送り込むという、荒唐無稽な作戦を描いていたのに対し、本作品は母国からの支援が皆無な状況で、いかに逃げるかというシンプルなものであり、ソマリア内線下において、韓国と北朝鮮で、こんな出来事があったのかと初めて知ることに。
渡航禁止国家となっているため、ソマリアでの現地撮影が不可能となっていることから、西アフリカのモロッコでオールロケされたとのことであるが、常に銃声や爆発音が鳴り響く現地の緊迫感たるや、一時も気が抜けない空気が伝わってくるもの。
そんな中、韓国と北朝鮮という、まさに水と油の二国の大使館員等が紆余曲折を経ながら、手を携えて、ともに脱出劇しようとする姿は、国交って何だろうと改めて考えさせてくれる仕上がりとなっている。
また、カメラワークも素晴らしく、とりわけ終盤にあるクルマによる逃走劇においては、一体どのようにして撮っているのか不思議なぐらいのクオリティを誇っており、この辺りは韓国映画が他の追随を許さないところ。
国を越えて、人間として協力する人々の姿に心熱くさせられるとともに、一見の価値ありの映像であるため、片道一時間かけて観に行っただけのことはあった満足度の高い良作。

演説ではなく、対話をしましょう。
ぶみ

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