藍紺

モガディシュ 脱出までの14日間の藍紺のレビュー・感想・評価

4.3
1990年ソマリアで内戦が勃発。対立する韓国と北朝鮮両大使館員たちがお互い孤立無援の中行動を共にし、首都モガディシュから生死を賭けた国外脱出を目論む事実に基づく物語。
これめちゃくちゃ好きなやつだった。とにかく映像の没入感が凄まじくてリアリティしかない。モガディシュの街並みや建物をそのまんま撮影地のモロッコに作り上げちゃった美術スタッフの力量と、潤沢な資金力でハリウッドにも引けを取らない韓国映画界のスケールのでかさみたいなものに圧倒された。
説明台詞がなくてもそれぞれの登場人物の行動や会話などで、彼らの性格がとてもわかりやすく描かれていて、リュ・スンワン監督ってこういうきめ細かな演出も出来る人なんですね。当初の脚本はもっとコミカルで且つ感情に訴えかけるような湿っぽいものだったらしいけど、監督が抑え気味にしてラストもあまり会話をさせず表情で見せるクールな演出にしたとか。これは大正解だったと思う。言葉がなく演者の顔だけの演技の方が胸にくるものがあってより深く心に残りました。
韓国映画なら絶対に外せない食事シーンもあってこれはもっと長くてもよかったと思ってしまうくらい好きだったw どうして韓国物の飲食シーンってこんなに魅力的なんですかね(自分でも何にそこまで引き付けられるのか言語化できない。でも多くの人が絶賛してるからやっぱりいいんだろうな)。
今作には韓国・北朝鮮・ソマリア、三ヵ国の子供たちが出てくる。根っこは同じ子供じゃないかと思うのだけど国の事情や大人たちに翻弄された結果、その行動や意識の違いは悲しいくらいに描かれていて心が痛む。特に銃を手にして嬉々とするソマリアの少年兵には苦く暗い気持ちにさせられた。

個人的No.1は少々導火線の短い武闘派韓国参事官役のチョ・インソン。まわし蹴りと怒りのデス・ロードばりのブチ切れカーアクションにやられてしまった。若いころは何とも思わなかったけど少しおでこが広くなってきた今の方が断然魅力的だと思いましたw
藍紺

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