グラノーラ夜盗虫

モガディシュ 脱出までの14日間のグラノーラ夜盗虫のレビュー・感想・評価

4.0
社会派×エンタメ映画、韓国の得意分野だと思われる。この分野の第一人者ポン・ジュノ監督の諸作品の他、1987、タクシードライバー、お嬢さん等、名作を目にする機会がこれまで多く存在した。残念ながら、近年の日本映画において、このカテゴリで成功している例が思い当たらない。
韓国・北朝鮮大使館員のソマリア脱出(ベースは史実)を、カーチェイスやパニック映画の要素も含めて描く異質な映画で非常に面白い。またいくらでもエモい話に仕上げられそうなところを、抑制的に描いてる点もリアリズムに貢献しており非常に好感。

ただ、ソマリア人たちを人格を持った個人たちとして描く意思がなかった点がもやもやした。ソマリア人たちはひたすら動物的に粗暴で恐ろしい人々としてのみ描かれ、その命も主人公たちよりずっとスーパーライトに描かれており、まるでゾンビ映画におけるゾンビのような扱いに終始していた。映画「カサブランカ」などと同様、ソマリアはただの舞台であって、あくまでテーマは自分語り(韓国-北朝鮮関係)だからなのだろうが・・。

(ソマリアって天気も街並みも官公庁の建物もモロッコみたいなんだなあと思っていたら、撮影はモロッコのエッサウィラで行われていたらしい。青い空とからっとした空気、世界の彩度がどことなく高いあのモロッコが恋しくなった)