まーしー

モガディシュ 脱出までの14日間のまーしーのレビュー・感想・評価

4.5
1990年のソマリアを舞台に、内戦に巻き込まれた韓国と北朝鮮の大使館員たちの交流と脱出劇を描いた本作。

朝鮮半島の北緯38度線がソマリアにも存在することを確認した。
行き場を失った北朝鮮の大使たち。同胞ながらも韓国の大使館に助けを求めるのは禁じ手。
「命を守る」という人道的な観点から、その禁じ手を破り、韓国大使館に駆け込んだ北朝鮮の大使たちと、その受入れを決めた韓国の大使たち。
双方とも疑心暗鬼ながらに夕食を食べるシーンが印象に残る。

同胞たちで小競り合いが起こる中、大局観で物事を見た両大使には脱帽。
少しずつ、少しずつ……双方の心が通い合っていく様子には胸が熱くなる。
同時に、そのことを表に出せない両者の立場に、もどかしさも感じる。
人道的な観点と国を代表する立場の狭間で揺れ動く、大使たちの苦悩が伝わってきた。

銃音が響く中での脱出劇。
最後の最後まで気の抜けない、緊張感ある内容だった。
ハリウッド顔負けのクオリティの高さと、南北問題という韓国特有の事情を抉った本作は、間違いなく良作だと思う。

同じソマリア内戦を描いた『ブラックホーク・ダウン』がアメリカらしさを感じる作品であれば、本作は韓国らしさを感じる作品。
朝鮮半島の南北の緊張が続く中、韓国がこうした作品を生み出したのは、政治を超えたエンタメの力だろう。