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ザ・リバーのswansongのレビュー・感想・評価

ザ・リバー(1984年製作の映画)
3.9
平成実録シリーズ②

= 四条大橋の袂(たもと)で =

異常な暑さに見舞われた20××年のゴールデンウィーク。
よりによって温度変化の著しい京都市内をウォーキングのコースに選んでしまった私は、30分も歩かないうちに、もうへろへろです。

"… あかん、無理や。本日の京都散策はこれにて終了。とりあえずあの店で涼もっと。"

前から気になっていた大正五年創業の老舗カフェにかけ込んだら、コーヒーの香り漂う店内は涼しいのなんの。

広~いフロアの一隅で読書に耽っていると、やがてどこからともなく、光沢のある白いロングドレスを着たお姉さん4人組が、手に手に弦楽器を携えて登場。
4人は店内のお客さんたちに向かって一礼すると、美しい旋律を奏で始めたのです。

ほどよく空調が効いた店内に響く弦楽四重奏。
クラシック弱者の私も、この粋な計らいには感謝しかない…
んだけれど、実はこのとき店内では、ちょっと気になる別の事態が進行中でした。

"え、楽器の名前?ウチに任しとき。
左から順に、ヴァイオリン→ ヴァイオリン→ ヴィオラ→ チェロ → おっちゃん …えっ???
なぁなぁ、右端のチェロの人のすぐ横にうずくまってこっち向いてる変な男のひとは何なん?"

"うわ嫌やわぁ。ひょっとしたらこの界隈に出没してる"アブない人"なんちゃう?"

"きゃっ、一瞬目が合うてしもたやん!
これって通報したほうがいいんかなぁ…"

カルテットの女性たちは四条通りに面した大きな窓ガラスを背にして演奏してるんだけど、そのすぐ隣にはたしかに、彼女らに手が届く位置に陣取ってチラチラと周囲を盗み見ている挙動不審の"5人目のメンバー"が。
このままでは演奏中の女性たちの身に危険が及びかねません。
これはやっぱり通報… ( 長すぎるので中略 )


-現場での取り調べより-

…いえいえ、ちゃいますよ!
私、決して怪しい者ではございません。
さっきも書きましたとおり、あんまり暑いもんやから、ウォーキングを中止してこの店で涼んでたらいきなりあの4人組が現れて、私と同じように窓ガラスを背にする格好で、しかも私のすぐそばで演奏を始めましたんです。
彼女ら4人に通路をふさがれたうえ、演奏中にぬうっと立ち上がることもままならず、ああやってワンステージ終わるまであそこでお客さんらの方を向いて身を縮めてるしかなかったんです。
そんな変態を見るような目で私を睨むのやめてくださいよぉ…



幸い通報は免れました。
従いまして最後の供述のくだりは、被疑者swanの心中の叫びでございます。
これってただの自意識過剰?


※映画「ザ·リバー」のレビューは、後ほどコメント欄に記します。
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