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異動辞令は音楽隊!のtakaeのレビュー・感想・評価

異動辞令は音楽隊!(2022年製作の映画)
4.0
捜査一筋30年の鬼刑事が、自らの言動により突然刑事とは畑違いの「警察音楽隊」に異動になる。時代に取り残された男が新天地でこれまでの生き方を見つめ直すことで、少しずつ前に進んでいく"人生大転換エンターテインメント"

刑事は足を使って捜査するもの。涼しい部屋でのんびり会議なんかしてる奴は刑事とは言えない。
そう言い放ち、上司に盾付き後輩を恫喝して頭をどついたり。阿部寛演じる主人公の成瀬は、周囲からも疎まれる昔堅気の鬼刑事。

あ~こういう人いるかも...って思う反面、少しわかる気もしました。「今はそんな時代じゃないですよ」と言われても、それを認めたら今まで自分がやってきたこと全てが間違っていたと認めることになるような気がするから。

そんな成瀬が、刑事とは畑違いの「警察音楽隊」への異動を命じられます。
楽器の演奏なんて刑事の仕事じゃねぇだろうと初めは腐っていた成瀬が、音楽隊のメンバーとの"セッション"を通して少しずつ変わっていく過程がすごく良かった。

失敗したら他の誰かが助ければ良い。ひとりだと音はひとつだけど、セッションすればそれがハーモニーになる。

セッションってただ各々が自分のペースで演奏するのではなく、相手の音をよく聴き、呼吸を合わせて音を奏でることが大切だと思うけど、音楽だって人との関係だってそれは同じだよね。

「時代に取り残された男」と書いたけど、これまでの自分のやり方を時代に合わせてアップデートしていくことってすごく大変なことで。でも、きっと新しい古いどちらが正しいということではなく、それこそそれぞれの良さを認め合い、共にセッションしていくことができたら最高ですよね。

主演の阿部ちゃんの、葛藤しながら泥臭く進んでいくところ、人間くさい成瀬のイメージにぴったり。ジャージ姿もダサくて最高だし、ドラムの演奏にめちゃくちゃ痺れました。
今回出演者はみんな楽器未経験でゼロから練習して撮影に臨んだとのことだけど、この吹き替えなしの演奏が本当に素晴らしかった...!特にラストの演奏は鳥肌もので、メンバーの奏でる音が胸に響いて涙が止まりませんでした。音楽って本当に素晴らしい!

音楽隊の面々もそれぞれみんな個性的。高杉真宙 くんのシニカルな感じ、すごく上手かったなぁ。そして、成瀬の後輩役の磯村くん。成瀬への反発や葛藤を表情や視線で表現する彼の演技は、見る人に演じていることを感じさせないところが本当に素晴らしい。毎回役を生きているところが私が彼を好きな理由でもあります(書くとキリがないからこのあたりでやめておく)

笑いあり涙あり、でもタイトルのコミカルさからイメージしていた内容とは少し違い、割とシリアスなところもあり。
音楽の素晴らしさや仲間の大切さ。場所は違っても人はセッションできるということ。エンドロールで流れる髭男の曲に思わず体が動いてしまうような爽やかな感動と、仲間と自分を信じて一歩踏み出す勇気をもらえる素敵な作品でした 🥁
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