チッコーネ

アダン 禁断の果実のチッコーネのレビュー・感想・評価

アダン 禁断の果実(2019年製作の映画)
2.7
「フィリピンの田舎村で芽生えた同性愛が迫害され…」という物語だったら観ていなかったと思うのだが、サスペンスのようだったのでチョイス。
前半から危ういイメージが頻出する演出、その意味での期待は裏切られなかった。

ただ現代において「レズビアンを題材にした映画」を男性監督が撮る際には、充分な配慮が求められて当然。
再三登場する濡れ場は籠る情感、説得力ともにいまひとつで、男性向けサービスカットに観えかねぬ脆さを孕んでいる。
さらにクライマックスの展開を当事者はどう観るのかわからないが、個人的には形骸化した濡れ場より「こちらの方が激しく熱い、愛のかたちだ」と感じられた。

インフラが充分に整えられておらず「電波が届きやすい、開けた場所の木に吊るした携帯を、有料で利用させる」という田舎村の信じがたい光景や、フィリピンお約束の「腐敗した警察権力描写」なども登場する。

全体的に「意外性のある物語を構成していこう」という志が感じられたものの、編集術は洗練されていない。
また「疑心暗鬼」を小出しの伏線にせず、一気に噴出させるという采配に、ストーリーテラーとしての未熟が感じられる。