真田ピロシキ

マッシブ・タレントの真田ピロシキのレビュー・感想・評価

マッシブ・タレント(2022年製作の映画)
3.5
ジョエル「エリー、これが廃墟から集めた俺の映画コレクションだ。」
エリー「ほとんどの映画にニコラス・ケイジが出てない?なんかキモいんだけど…」

ニコラス・ケイジの自虐映画にペドロ・パスカルが出ていると聞いて興味を覚えた。しかしケイジは自虐するほど落ちぶれているのだろうか。最近はもっぱらB級映画に出てばかりとは言え存在感はアピールできてるわけで、ヴァンダムとは違うと思うのよな。実際映るとまず顔が60近いのに精悍でカッコよくて、監督に直で役を売り込む真剣さ、娘への空回りしたコミュニケーションの滑稽さ、打ちひしがれてヤケになる哀愁、思いがけず得た友への親愛と葛藤とケイジの確かな演技力を見せてくれて、ジャンルとしてはコメディだが披露する演技は懐が広い。ミーム化されてた変顔と絶叫もアピール。こういうのがケイジに変なイメージを植え付けたので良くないと思うのだけど。ミームは害。使う奴も含めて滅ぼされるべき。

だけどケイジの映画をそれなりに見ていても熱心に追ってるのではないので散りばめられたケイジネタがよく分からない。内なるケイジとの会話にもイマイチ合点が行かず。最後はハリウッドアクションスターな活躍をして妻と娘との絆を取り戻しメデタシメデタシってのも安直。女子供をおっさん(爺さん?)のトロフィーにすんの?有害な男らしさの塊であるハリウッドのなろう系ナーメテーターみたいなもんやんと思うわ。繊細な物語を望むと言いながらこれじゃ本音では自分が主人公のヒーローしか認められない男に見える。去年の『ピッグ』の方が暴力を振るわせず孤独でも芯を持ったケイジの魂を描いていてずっとケイジ再評価映画として優れてた。

もっともケイジが主役にしてヒーローでなければならない理由はあるわけで、それが熱狂的ケイジファンの大富豪ハビ。裏の顔は武器商人のボス?不本意な立場に置かれて理解者も望めない生活を送るおじさんの推し活。彼のことを考えるとケイジは脇役に甘んじる立場でいてはならないのだろう。当人を前にして引かれることを恐れるほど気合いの入り過ぎたケイジグッズコレクション。推しは中年男性をも救うのだイエーー!推しに対して恋愛感情ではなく純粋に尊敬と憧れなのも良いオタク。ケイジに娘とのわだかまりを感じ取るとお節介を焼く、推しの幸せが自分の喜び精神!声優が誰かと付き合ったらキレるような奴らとは魂のステージが違う。でも自分の脚本に推しを出したい欲望はある(笑)この可愛いペドロ・パスカルのおかげで映画の満足度はなかなか高い。『ゲーム・オブ・スローンズ』のプリンス・オベリンや『The Last of Us』のジョエルなどシリアスな役のイメージが強かったのが広がりを見せられて、今後更に注目する人となりそう。この人をラスアス感想で「クリスプラットとリーアムニーソンを足して割ったような顔」と書いてた無知な奴は反省しとけや。結構有名な人やし。

ケイジとハビの映画トークで「ベスト映画は季節や気分によって変わるから決められない」と言ってたのは同感。ケイジ映画としてはノレない部分があったものの、感性は近しいものがある気がする。それで『パディントン2』ってそんな面白いん?あとケイジ作品なら何でも褒めそうなハビさんだが、頭のおかしいキリスト教カルト映画『レフトビハインド』をどう思うのか気になる。あれは本当にバカにする以外楽しみようのないクソ映画で、いくら借金があってもこんな映画に出たのはケイジの大きすぎる汚点としか思えなかった。流石に今回もネタにはされてないよね?