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戦場のピアニストのstanleyk2001のレビュー・感想・評価

戦場のピアニスト(2002年製作の映画)
4.5
『戦場のピアニスト』(原題: The Pianist)2002

「(ポランスキーは)第二次世界大戦時はドイツがクラクフに作ったユダヤ人ゲットーに押し込められた。ゲットーのユダヤ人が一斉に逮捕される直前、父親はゲットーの有刺鉄線を切って穴を作り、そこから息子を逃がした。父母はドイツ人に別々に連行された。母親はアウシュビッツでドイツ人に虐殺された。また、母親はこの時、妊娠していたとポランスキーは証言している。父親はドイツ人により採石場で強制労働をさせられ、終戦まで生き残った。
また自身も、ドイツに占領されたフランスのヴィシー政権下における「ユダヤ人狩り」から逃れるため転々と逃亡した」(wikipedia)

この映画の内容と監督ロマン・ポランスキーの実体験はかなり重なり合う。自分が死んだらこの映画のフィルムを棺桶に入れてくれと言っている程気に入っているらしい。

ポーランドの首都ワルシャワがナチス・ドイツから占領されユダヤ人がゲットーに集められ最後に強制収容所に送られる。主人公ウワディスワフ・シュピルマンは間一髪逃れワルシャワ市内の隠れ家を転々として終戦を迎える。

ワルシャワという定点観測カメラから見た第二次世界大戦史だ。なるほど原作の題名は「ある都市の死」

ナチス・ドイツの容赦の無さ。ユダヤ人を人間と思っていない冷酷さ。何度も目を背けたくなるような残酷な場面があった。しかし全て本当にあったことだ。全てをフィルムに残したいというポランスキーの執念が画面から伝わってくる。

シュピルマンが出会うナチス将校を見て「パリは燃えているか」のゲルト・フレーべ演ずる将軍を思い出した。ヒトラーはパリを撤退する時にエッフェル塔も凱旋門も爆破しろと命ずるが将軍は命令を無視して連合軍に投降する。「エッフェル塔を燃やしたら戦いに勝てるとでもいうのか?」

音楽という美、建築という美を惜しむ気持ちがナチス将校の中にもあった。

今、子供が避難しているウクライナの劇場を爆撃したロシア軍人はどんな気持ちだったか?命令を拒否すると処罰を受けるから仕方なしにやったのか?

人間らしくある事を止めろと強制するのが戦争。戦争を始めたプーチンはヒトラーと並ぶ狂気の独裁者の汚名を得た。なぜ悲劇は繰り返されるのか?
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