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戦場のピアニストのバロウズのレビュー・感想・評価

戦場のピアニスト(2002年製作の映画)
4.9
ナチスドイツのホロコーストを生き延びた実在のピアニスト、ウワディスワフ・シュピルマンの伝記映画。
この主人公はシンドラーのようなヒーローでは無く、ただ生きるために、闇雲に逃げ回るだけの「普通の人間」として描かれている。類稀なるピアニストとしての才能を除いては。

キャラメルに缶詰、イチゴジャム。我々が普段何気なく口にしている食べ物がここまで愛おしいものだったのか、と再認識させられる。
ホロコーストを経験したロマンポランスキー監督だからこそ描くことができる戦争の生々しさ。
車椅子の老人を屋上から突き落とす場面は衝撃を通り越して恐怖すら感じられた。

そしてクライマックスのピアノ演奏シーンは圧巻。栄養失調で震える指先から奏でられるメロディ。初めは弱々しかった演奏が次第に力強くなっていく。彼の「ただ生きること」への執着が感じられる。
名優エイドリアンブロディにトーマスクレッチマン、そしてショパンの代表曲「バラード第1番 作品23」も相まって映画史に残る名シーンだと感じました。

ナチスドイツのホロコーストを扱った作品は何本も見ましたが、ここまで魂を揺さぶられたのは初めてでした。
ショパンの楽曲とロマンポランスキー監督の演出が素晴らしい。人生のベストです。
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