佐藤克巳

春の目ざめの佐藤克巳のレビュー・感想・評価

春の目ざめ(1947年製作の映画)
5.0
石坂洋次郎原作「青い山脈」が同年連載され八住利雄、成瀬巳喜男がアイデア頂きの勢いで第1期東宝ニューフェイス久我美子を初主演に抜擢した、本家以上の出来映えの成瀬監督快心の傑作。旧制高等女学校生徒久我、木匠久美子、國井綾子と、旧制高等学校生徒杉裕之、近藤宏、星野和正の曙グループが織り成す戦後ならではの思春期映画の元祖的作品。久我は、父石黒達也、母村瀬幸子、妹の厳格な家庭に育ったが、明けっ広げの待合女将母飯田蝶子と哲学に被れた兄近藤のいる木匠の家を國井と共に訪れていた。医師志村喬の息子杉とは気の合う幼馴染、寺で自炊生活をおくるバンカラで画家志望の星野も集まり、勉強したり遊んだりの楽しい日々。久我の同級生の妊娠騒動からお互い異性を意識し合う事になり、久我は星野に無理矢理接吻され悩み苦しむが、星野の上京と、妹からお姉さんは子供か大人のどっちと問われ可笑しくなって気が晴れ、グループのハイキングに仲間入りをするのだった。身体検査の後、ふざけて黒板に乳房の絵を描く同級生がいたりする開放感いっぱいの雰囲気だったり、突然の雷雨に思春期の心揺れる描写があったりと機微に富む演出が素晴らしい。
佐藤克巳

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