ターミガン

グッバイ、ドン・グリーズ!のターミガンのレビュー・感想・評価

2.9
2022年2月18日公開
いしづかあつこ初監督オリジナル作品
(脚本も同氏)



田舎の高校生・ロウマと優等生の親友・トトで結成された『ドン・グリーズ』
高校進学を機に活動するのは長期休みに限定されたが、新メンバーの外国人ドロップが加わり、三人はひと夏の冒険に出る……といった導入。




登場人物も少なく、声優も専業プロの起用が多く、あらすじだけ見れば間違いないと思ったが、、、全然ハマれなかった。





脚本が不完全すぎる。



“伏線回収”に囚われ過ぎて、説明不足になっている。
制作側はオチやギミックも分かった上で作っているから疑問に思わないのかもしれないが、それら全てを初見で整理しながら取捨選択していく視聴者にとっては、ナゼ?という疑問符だけが常に付きまとい、結果として感情移入できないまま最後を迎える。
なので答え合わせをされてもよく分からないまま、という残念パターン。



これらの現象を招く時は、往々にして詰めの甘さ。
作り手がぼんやり構想のまま、細かい所は棚上げして走ってしまうから視聴者が置いてけぼりになる。


何事も“理想を追うにはその過程が重要なのだ”ということを改めて感じる。


【自分に必要な宝物を教えてくれるという、アイスランドの黄金の滝に在る幻の電話ボックス】というギミックも、まずドロップの存在自体が不可思議なまま語られたって、それどころでは無いのだ。


そう。猪突猛進ドロップの設定がガバガバ。
おまけにキャラ設定も幼稚すぎて違和感しかない。


他社を例に挙げるのも申し訳ないが、(作品の好き嫌いは別として)スタジオカラー・庵野秀明が制作する上で“試写以前のパート段階でも、何度も社内に公開してアンケートを取る”というのは、制作手法としては間違いではないのだと思う。


それぐらい「伏線・謎かけ」と「ご都合展開・意味が分からない」とでは雲泥の差があるということ。


説明すべき設定を煮詰めずに不自然さをそのままに進行するのって「伏線回収」という、手軽にそれっぽい言葉が独り歩きしてる弊害じゃなかろうか。
猫も杓子も「伏線回収」って、それはあくまで副産物みたいなものであって、まずは作品としてのしっかりした軸や筋があっての事であり、その仕掛けに囚われて本来のストーリーや設定が違和感ありではお粗末すぎて目も当てられない。


それの例としてインスタのアカウント=チボリの件。
劇中で彼女との接点が申し訳程度にしかなく、間違い電話の為の装置としか機能していない。
だからロウマの気持ちや迷いも感情移入できなくなる。




【思い切って高く飛べば、きっと今まで見えてこなかった景色が見えてくる】という主題はよく分かる。

純粋な高校生達の冒険ファンタジーを通して、それらを伝えたいのもよく分かる。
笑える場面もピュアも葛藤も苦悩もスタンド・バイ・ミーしたいのもよく分かる。

だからこそ!
間違い電話一本で、どうやってドロップはアイスランドから来日・合流したのか。
そこだけでもちゃんと構成してくれれば、山の中で熊や警察に遭遇しても逃げおおせた所には目をつぶれるのだけど。


テーマもいいしCV.キャスティングもいいのに、脚本が勿体ない作品だった。