このレビューはネタバレを含みます
2024/3/31(日) dアニメニコ支店で観た。
めっちゃおもしろかった!!!
なによりもまず、映像がすばらしい。いしづかあつこ×マッドハウス=神……
『さくら荘のペットな彼女』とかでも感じたけど、いしづかさんの画コンテ演出ホントすごいわ。細田守や山田尚子や小林治のような尖った個性的なスタイルじゃないから注目されにくいけど、本当に全カットすばらしい。画としての構図と、作画で動いたときの魅力と、音響音楽面も含めたテンポの制御と……どれも完璧といっていい。挿入歌とか歌のシーンどれも超良かった。
そしてマッドハウスの映像好きすぎる~~~ 写実から少しだけ塗りっぽさに寄せた美術の風景も、光や炎や水などの自然物の撮影処理の仕方も、安心と信頼の濱田邦彦さんを筆頭とした作画の高水準さも、遠景から人物を描くときの3DCGの使い方も、なにからなにまで丁寧に作り込まれていて、めちゃくちゃすごかった。映像面では確実にマッドハウスがいちばん好みのアニメ制作会社だと再認識した。故郷のような安心感。
第一には映像が最高だったことに尽きるのだけれど、いしづかさんの脚本も良かった。
TVシリーズの『宇宙よりも遠い場所』が大ヒットしたことで、同じスタッフでオリジナル劇場アニメを作ろう、ということで始まったであろう本作品だけれど、うまい具合によりもいと対応させつつ対照的な物語になっていた。
よりもい ドングリ
寒(南極) 暑(夏)
南極 アイスランド
船 自転車, キックボード, 徒歩, 飛行機
海 山
女子 男子
4人 3人
公的 私的
年齢的には高2と高1でほぼ同年代だが、女子4人の友情モノだったよりもいに対して、こちらは男子3人の友情モノになっている。三者関係オタクとしてはたまらない。(一本の映画でメイン4人だと多いという判断だろう)
ヘテロ要素もなくはない(ゲストキャラにしらせから続投のざーさん)が、主題ではない。
そして何より大きな違いは、よりもいが民間とはいえ南極観測隊というガッツリ大がかりな(大人主導の)組織・プロジェクトのなかで南極を目指して旅をする公的な話だったのに対して、本作は子供3人だけの秘密の冒険の話でありきわめて私的な旅である点。しかも旅に出る理由が「自分たちの無実を証明するために山奥まで飛んでいった小型ドローンを回収しに行く」という絶妙にしょうもない動機なのが最高! 旅先も、チャリ(&キックボード)と徒歩で辿り着ける1泊2日レベルの中小規模のものであり、スケールの小さい物語が好きな自分にとっては『よりもい』よりもこちらのほうが好感が持てた。
とはいえ、終盤でメインキャラをあっさり死なせてからの、故人の足跡を追う旅(よりもいと共通要素)としてアイスランドまで高校生2人が旅をしてしまうため、物語のスケールはやはり『よりもい』に迫るくらい壮大になってしまったのは残念。その旅がダイジェストだったのはなんとも……(『Charlotte』終盤を思い出した) あそこから再びガッツリ冒険パートを映されても困るので仕方ない。
よりもいではノートパソコンの電子メールだったが、メディアを介して時空を超えた(自分との)〈再会〉をクライマックスの仕掛けに持ってくる、というのは本作でも電話(スマホ-公衆電話)のかけ間違いギミックで用意していた。ただ、これもよりもいの二番煎じ感が拭えないというか、これをやるためにドロップを病弱設定で死なせてアイルランド旅パートを入れる必要が生まれているので、そのくらいじゃあ無かったほうが良いかもしれないとは思う。さんざん余命僅か感を匂わせておいて実は全然そんなことありませんでした~(/治りました~)オチのほうを観たかった。変に感動ポルノっぽくしなくていいよ。
にしても、いしづか監督はLINEのトーク演出といい、スマホやSNSをアニメに組み込むのが本当にうまい。山の中で「やろうぜ、インスタ」とか話すの面白い。フォロワー2のアカウント……『サイダーのように言葉が湧き上がる』か!?
おはなしとしては別に大したことをやっておらず、やや不自然なかたちで登場人物が激昂して喧嘩し始めたり心情を吐露し始めたり仲直りしたりと、そのあたりの練れてなさはあるんだけど、そういうのはぜんぶ、ひと夏の冒険!俺たちだけの青春!!という勢いと映像の巧みさで納得できました。
いしづかさんの映像を見ていて、異なる位相の2つを1つの画面内に同居させたり映り込ませたりするのが上手いな~特徴的だな~と考えた。まとまってないけど、メモ書き
・自然と人間 風景とキャラ
・機械と人間 バーナーやカメラやスマホと、それを触る手など
・画面の向こう側とこちら側 スマホ画面やカメラのレンズ内映像。最終的にドロップも写真=「向こう側」の住人になる
・デジタルとアナログ 上のやつに対応
・美術と作画 止まっているものと動いているもの 星空と流れ星など
・名詞と動詞 Don't Glee 文法(ルール)が破綻したかたちで、しかも「否定形」で結びつく
オリジナルの単体アニメ映画であり、キャラ売りもしていないとはいえ、なんでこんなに売れなかったんだろう……やっぱりタイトルがダサ(自主規制
マイナーなのは仕方ないとはいえ、観た人のなかでもあんまり評価が芳しくないのが驚いた。でもたしかに映画館で観てたらここまで高評価にならなかった気がする…… やっぱおうちのPCでスクショを1カットずつ撮りながら観るのが最高なんだよな。