チッコーネ

ナスターシャ 〜ドストエフスキー「白痴」よりのチッコーネのレビュー・感想・評価

3.5
玉三郎がすでに舞台で成功させていた演目の映画化。
アンジェイ・ワイダが受託した経緯はわからないが、テレ東の周年記念作品でもあるようなので、一番の目的はジャパン・マネーかも。
撮影は東欧で行われており、雰囲気のある舞台美術や衣装、照明、そして僅かに挿入されるロケ場面には、一定のクオリティが担保されている。

トランス文脈で本作が語られている文章などを見たことはないのだが、玉三郎が堂々たる女装でヒロインを務めている場面は、きちんとある。
また直観的かつ深い理解で結ばれたナスターシャとムイシュキン公爵を、玉三郎が一人二役で演じ分けているため、パルフョーンとの関係に微妙なホモセクシュアル要素が加わっているようで楽しい。

パルフョーンを演じているのは永島敏行なのだが、これがまた再発見とでも言いたくなるようなイケメンぶりで、黒澤版の三船様より色っぽい。
体躯の良い長身に無精髭がよく似合うのだ。
見栄えは良いがテレビドラマやプログラム・ピクチャ専門の、ド・ノンケ商業俳優をピックアップし、全く別のイメージを引き出しているところはなんとも、スリリングであった。
また彼の演技も決して悪くはなく、底力を発揮してみせている。