限りなく美しい海と、そこで純粋に生きる人々の古くから続く伝統捕鯨の迫力あふれる映像。何より生々しいほどの『命』をダイレクトに感じる力強い映画だった。
かつて、世界中多くの場所で人々はそれぞれの地に合った『命』の繋ぎ方があったはずで、映画の舞台となるラマレラでの鯨漁も、そんな一つに違いなかっただろう。
しかし、そうした命の繋ぎ方が「稀なもの」となり、スーパーでパック詰めされている肉や魚しか口にすることがほとんどなくなった今。この映画は、ストレートにそして強烈に、私たちの奥深い部分を揺さぶってくる。
この凄まじい映像が撮れたのは、監督が長年かけてこの村に通い続け、人々に信頼を得たからこそだろう。
だから、映画を観ているうちに、魂を持つという鯨舟(テナ)に一緒に乗り、子どもたちと海に潜り、クジラ料理を一緒に食している様な気持ちにもなれた気がする。
願わくば、次世代たちも、また先の世代たちも、こうした伝統文化に誇りを持ち守り続けて欲しい…。素直に私はそう思った。