ワンコ

くじらびとのワンコのレビュー・感想・評価

くじらびと(2021年製作の映画)
4.0
【飽食の時代を考える】

※ これはレビューというより、独り言みたいなものだと思って下さい。

前、NHKスペシャルで、「クジラ対シャチ」というドキュメンタリーを放送していた。

その1、2週間後に、生きたダイオウイカを初めて撮影したというドキュメンタリーを放送していたので、話題はこっちに移ったが、僕は、クジラの話の方が好きだった。

北の海に移動中のクジラの親子をシャチが群れで分断して、子供のクジラを海中深くまで引きずり込み、窒息させて殺そうとするのだが、別の種類のクジラが複数現れて、その子供のクジラを救という内容だった。

これを見たからというわけではないが、僕は鯨肉を食べない。

正確に言うと、食べなくなったのだ。

昔、デンマーク人の友人と、日本の捕鯨について話した時、敢えて食べる必要がないなと考えるようになってから、何故か、自然と鯨肉を食べる機会が僕の周りから消失した。

日本の伝統的に貴重なタンパク源と言う僕の主張に対し、問題の所在は違う、日本の商業捕鯨の効率性の問題だと、彼は主張していた。

日本の捕鯨は、昔は近海だけで行われていた。
しかし、商業的な価値を見出した水産企業が、大型捕鯨船を建造し、遠洋に進出、船の建造コストや、遠洋に行くためのエネルギーコスト、船だけではなく水産企業で働く人の人件費まで考えたら、数十匹の鯨では足りはずはなくて、更に、捕鯨業務から得られる利益を最大化するために、もっと多くの捕鯨船を建造して…、相当数の鯨を獲りまくったのだ。

もっとも、昔は、鯨油を取ろうとしたアメリカやオーストラリアの捕鯨によって鯨の数は激減していたし、その後は日本の商業捕鯨が追い討ちをかけたのだ。

日本の報道を見ていると、反対運動の違法とも思えるシーシェパードの妨害活動が注目されたりするが、現在、IWCを脱退し、商業捕鯨を復活させた日本が、どの辺の海で、どの程度の数のどんな種類の鯨を捕獲しているのか知ってる人はどれくらいいるだろうか。

このインドネシアの村の1500人が1年間暮らせるとするクジラ10頭に対して、日本は近海、つまり、排他的経済水域内で、ミンククジラを、IWCがかつて調査捕鯨で認めていた500から600頭、捕獲しているのだ。

昔と比較したら、事業として継続するギリギリの水準で、もはや、これは貴重なタンパク源云々というレベルではないと思うし、食料の安全保障を考える上での満足できる水準でもないだろう。他にタンパク源を確保する方法はあって、そちらの方が食料安全保障の目的に実は合致するのではないのか等いろいろ考えてしまう。

僕達は豊かな日本で生活すると同時に、環境を意識しながら、こうしたインドネシアの村の人達が、急激な気候変動などないなかで、安定的に食料を確保して、命を繋げることが出来るように様々なことを考えるべきなのではないかと思う。

日本で、ご近所の鯨肉を振る舞うお店が続けられるのは良いことだと思うが、それで終わりということではないだろう。

この作品、意義のあるものだと思うが、クジラの断末魔に近い叫び声のような声は心をえぐられるようだったし、死んだクジラの目も、同様だった。

命とは何なのか、知らせるための演出なのだと思うけれども、好きにはなれなかった。
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