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くじらびとのtoshiのレビュー・感想・評価

くじらびと(2021年製作の映画)
3.9
「私たちは鯨を殺すが、鯨にとても感謝している」作中のこの言葉どおり大海原にて鯨を捕ることで生きながらえるインドネシアのとある村に密着したドキュメンタリー映画

監督が30年かけて村に寄り添い船にも同乗し撮影しただけあって、まるでその村の一員になったかのように共に命をかけて仲間と海に出て冒険し仲間の死を悲しむ全く違った人生の擬似体験ができる映画だった。

鯨漁の方法は自分が想像してたよりもかなりシンプルかつものすごく危険なもので、船の穂先に立ち・モリを持って・船よりも大きい鯨が現れたら・船ごとクジラの上面に近づけ・飛び込みながらモリを刺す。当然鯨は暴れ、尾鰭を撃ち、それが船に当たると沈没し、ましてや人に当たると死に至る。それでも村人全員の生活ために鯨に正面から立ち向かう人々の姿がクジラの血と共に海一面が赤に染まりなんとも言えない映像美が目の前に広がる

この映画を見ると自分の生きている世界の動物愛護とか捕獲禁止条例が一部の倫理観や偏った人々の世界と価値観で構成されていることに気づく。少し場所を変えるだけでこんなにも世界が変わるという事実を改めて考えさせられて、少なくとも自分が今自分らしく自由にある程度幸せに生きられているのもいくつもの奇跡が重なって今ここに存在しているからなんだろうなと思った

『バリで一瞬働いたがお金に追われているような気がしてこの村に戻ってきた』そう言う村人の気持ちがこの映画を見てると素直にわかるような気がします。いつか同じような経験ができる時間があるだろうか

前情報は予告ぐらいでみに行ったんですが監督含め撮影製作まで全て日本人いう事をエンドロールで知ってびっくりしました。膨大な時間とそこに生きる人々・撮影スタッフ含めて全員が命をかけているからこそ息を呑んで映画に没頭して観れたような気がします

真っ青な海の映像はとても壮大で映画館で見るとまるで自分が大海原を旅をしているようでした
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