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くじらびとのyumiasaのレビュー・感想・評価

くじらびと(2021年製作の映画)
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最初の衝撃はマンタ獲りだった。舟に打ち寄せるマンタの勢い。思わずのけぞってしまう。そしてついに鯨漁をみたとき、今まで感じたことのない感情がなぜか腕のほうから走った。感動とも畏怖ともつかない震えるような気持ち、いのち、というものの姿を垣間見たような、見るはずのない秘められたものを見てしまったかのような恍惚とした気持ち。人間たちの物語をすべて抜きにしてあの映像だけでもなぜか涙ぐむような不思議な体験。
もちろん村人たちの物語も興味深い。船というものは、あらゆる土地で魂を宿す存在なのが面白い。人であり先導者であり女人禁制。船大工の歌がある。村人総出で綱を編む。その村ではキリスト教が敬虔に信じられている。鯨の分け方は細部まで決まっていて、貧しい人たちは肉をもらえるかわりに気持ちをお菓子でさしだす。悲しい別れ。スマホを持っている人がいる。親は子に進学をすすめる。それでもなお、この舟での漁はつづく。村人たちが生きていくために。
映像としての美しさも素晴らしく、最初の村を映すドローンのカットから心を奪われた。海に映る舟の影を俯瞰から撮ったショットも鳥肌ものだった。
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