あんず

くじらびとのあんずのレビュー・感想・評価

くじらびと(2021年製作の映画)
4.3
世界的な異常気象のこの夏に観たから余計に感じるのかも知れないけれど、鯨や自然から「人間たち調子乗りすぎ」と言われている気がした。私も文明の利器に頼りすぎているし、必要以上に食べてしまっているなと反省した。

不毛の大地に暮らし、命を繋ぐために先祖から代々伝わる原始的な捕鯨を今も行う「くじらびと」。そこには厳格なルールや儀礼、役割があり、文字通り、命懸けの漁である。鯨10頭捕れれば1,500人の村は1年食べて行けるという。バリに行けばそれなりに稼げるけれど、お金に追われる生活は嫌だと。この島ならお金がなくても何とか物々交換で暮らせるというのだ。同じ時代の地理的にもそう遠くない島の人の言葉に衝撃を受けた。

真っ青な海に真っ赤な鯨の鮮血が広がり、鯨の吹いた潮に虹が掛かるシーンは忘れられない。残酷だけれど、美しい命の輝き。鯨が抵抗したり、船にぶつかる音や水飛沫の迫力もスゴくて、劇場で観れなかったことを後悔した。エンディングの『アベェ・マリア』がとても良かった。
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