あさ

The Son/息子のあさのネタバレレビュー・内容・結末

The Son/息子(2022年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

まあ、『ファーザー』が好きが故にな、勿論比較してしまう訳です。これは越えてこないかなと途中で感じてしまったけれど、それでもグイグイと追い上げて来る。(とはいえファザは越えないけれど厳格に比較するのはナンセンスかもしれない。)ゼレール監督がホラー作家(ファザをある意味ホラー映画だと思っている)であることを忘れていたわ。もう最後のグロテスクな妄想世界、辛すぎて全然別のこと考え始めたからね、脳が防衛本能働かせてたからね、直視、できなかったからね、上手いなァ〜。

劇そのものを観ている感覚もあるし、しっかりと映画でできることをしているとも思う。柵をカンカン鳴らして歩くシーンの緊迫感、言わずもがな洗濯機、ファザほどまでは行かないけれど、見せる場所を結構絞っているのも舞台的な良さがあって好きなのだ。

初っ端の設定からまあキツくて白目剥いてたけど、家父長制の報いを一身に受けるピーターは不憫。彼自身もその被害者である筈だから、報いや不憫なんて言葉、本当は使うべきではない。けれども彼は自分で悲劇の種を蒔いてしまったから。この後もlife goes onな訳で、セオにとっての父親はお前しかいない訳で、貴方はどんな気持ちで息子を育てていくのかってハナシ…。それでも最後まで彼が思う理想の世界の息子には愛すべき彼女が居て、鬱を克服して「成功」を手に入れているのだから本当にグロテスクで心が折れる。何かもう、誰がどうすべきだったとか大層な考えが全く浮かばなくなってわたしが一生一人で生きていくべきだとすら思った。グウ。ニコラスはどこに逃げられたの。見終えてしばらく経ってから、しかしこの目線から描いた作品ってありそうでそんなに無かったかなと…思っている。
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