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The Son/息子のIDEAコメント休止中のレビュー・感想・評価

The Son/息子(2022年製作の映画)
2.5
このレビューは、うつ病についての記述が多くあります。
もしご覧いただく場合はご注意ください。
このような話題が苦手な方はスルーしていただくようお願い致します。





読んでみようかな…と思われた方は↓へ…。










誰が言ったのか、『心の風邪』と。
うつ病は、まさかあの人が…と誰しもが罹患し得る疾患ではあるが風邪というふた文字から受ける印象はあまりに軽すぎる。致命的な結果になることも多いこの病で苦しむ方々を鼻で笑うような比喩表現であると常々感じる。

さて今作はうつ病などの精神疾患にかかった人を支援する団体や精神科医からきちんと情報を仕入れた上で制作されたようなことがパンフレットに書かれてあったが、それを鵜呑みにするならばなるほど納得。
支援者や医師の意見を明確に反映したようで、近しい人間がうつにかかったらどういう反応になるかや医療現場の立ち位置はリアルに描かれており、父、母、医療現場からの視点は巧みな演技・構成だと感じたが、圧倒的な当事者(患者)目線の欠落によりそれも霞む。その点はまさに『心の風邪』だと言わんばかりの描き方。

『わからない』
うつに苦しむ息子ニコラスがこぼした現状への認識。このわからない状況に観客を巻き込むことで作品の世界に惹き込むことを狙ったのかどうかは不明だが、『わからない』で済ますのは、今作を精神疾患についてオープンに考える機会にしたいという監督の意向からはかけ離れた描写ではないか。
実際心と体のバランスが崩れると自分でも説明できない『わからない』行動をとってしまうというのは真実であるが、そのまま描写したのでは考えるきっかけとなる問題提起が皆無、そりゃそうだ、わからないんだから。
ニコラス役のゼン・マクグラスの演技が達者で苦悩が目に見える分、苦しいだろう、辛いだろう…という感想で終わりにしやすく、なおさら考えるきっかけにはならないだろうと感じる。

自身が心の病を抱えている(いた)方、近しい人に闘病中の人がいる方にはおすすめしない。
私自身が患者でなかったら別の感想があったのかもしれないが、患者目線で観た分、演技が素晴らしかったよね〜では済ませることができない描き方だった。



もしこのレビューを最後まで読んでくださった方がいらっしゃるなら。

精神科の診断書を気軽に悪用する輩も多いですからうつ病への偏見はある程度やむなしと感じますが、大切な人を救うためには迷わず然るべき医療機関を頼っていただくことも必要かと思います。
精神科は行ったことがない、が一番良いのはもちろんですが、万が一の時のため、ぜひうつ病とはなんぞやと考えるきっかけを設けていただければ嬉しく思います。

もしも大切な人がうつ病になった時、寄り添えるように。