心が震えた。大きく揺さぶられた。
ジャケのイメージを根こそぎ裏切られる衝撃のラストに気持ちの行き場を無くした。
序盤こそ、ありふれた設定にちょっとしたガッカリ感があったものの、テーマは予想とは全く別の所にあった。そして、ずっと深くて重い。
感想、或いは個人的な想いをレビューするとキリがない。
だからと言って答えを出せる自信もない。
単純に夫婦関係が良好で愛情を持って子供を育てればそれで解決するものでもない。
我が子が心を病んでしまった時、或いは生まれながらに人並み外れた感受性を持ち合わせていたなら…
親の力だけでは解決出来ない問題は間違いなく存在する。
愛だけでは救えない事もある…
突き刺さった。鋭く抉られた。
自分だったら、果たしてあの状況で正しい選択が出来ただろうか…
冷静にその後を想像し、子供の未来を描き、点ではなく線として見据えた決断が出来ただろうか…
同監督、前作『ファーザー』から出てきたかの(認知症を克服したかの)アンソニー・ホプキンスの存在感、或いは圧倒的な重しが作品自体の重しとなっていた。
勿論、ヒュー・ジャックマンの父親ぶりも更には息子役ゼン・マグラスの繊細でナイーブな中に狂気を滲ませた演技も素晴らしかった。
立場の全く異なる妻役ローラ・ダーンとヴァネッサ・カービー、2人の心情にも感情移入してしまう。
面会シーンの鬼気迫るやり取り、一触即発の緊張感は息も出来ない程だった。
そして衝撃のラストへと向かう演出の秀逸さ。涙にもならない焦燥感とか絶望感とか綯い交ぜの感情に打ちひしがれた。
コレは親子関係に限らず社会全体で考えるべき課題じゃないかな。
問いかけの重さに身動き出来ない自分がいた。エンドクレジットが殊更長く感じた。いや答えが出せない自分自身と長い時間向き合っていた気さえする。
『ファーザー』同様、切実な社会問題にスポットを当て、複雑な心情を丁寧に描き、
最終的に鋭い問題提起には、もはや言葉がない。