【心の隔たり】
恐らく、内容を知らずにタイトルやジャケットを見ると多くの人はこうイメージする。暖かいヒューマンドラマ、感動の家族愛、涙を誘う物語。
そのイメージ通りの「綺麗な物語」を期待しているならば観ない方がいい。お金や愛情だけではどうにもならない「現実と後悔」を突きつけてくる。やってくれるぜ監督。
あの「ファーザー」を生み出したフローリアン・ゼレールの長編2作目、と言えば「普通の作品」ではない事が分かるかも知れない。前作同様、自身の戯曲「家族3部作」を基にした作品でもある。
あらすじ
弁護士のピーターは再婚した妻ベスと生まれたばかりの赤ん坊と共に、充実した日々を過ごしていた。そんなある日、前妻のケイトから17歳の息子の様子がおかしいと相談を受けるのだが…。
新しい人生を
再婚して再び歩んでいた父親
自分に問題が
あるのではないかと苛む母親
心に傷を負い
時間が止まってしまった息子
父親だって1人の人間。自身の人生もある。離婚だって珍しくもない。ただ、この父親には共感ができなかった。というか嫌いだ。
上辺だけを見て判断し、我が子の芯を覗こうともしない。「今後の息子」の人生を語りながらも、今の息子と同じ目線に立ってもいない。まるで「今」は息子の人生じゃないかのように。子供の為と思わせて、自分の為であるかのように。
これは、昔の嫌な思い出の一つ。
自分がまだ小さかった頃、家では両親の喧嘩が絶えなかった。私は喧嘩している内容を、階段に潜んではよく盗み聞きしていたものだ。日毎夜毎に聞いていると、次第にこう思うようになった。
「自分は居ない方がいいのかなー」
これはいっときの感情からではなく、芯に染み付くほど強いものになった。すぐに物事を忘れてしまう自分でありながら、今でもくっきりと心に根付いたままだ。
ここまでいくと「忘れる」とか「乗り越える」ではなく、その感情と死ぬまで寄り添っていくものとなる。そして厄介な事に「根付くもの」は人それぞれだ。向き合い方も寄り添い方も正解がない。
物語とは何ら関係がないのに、そんな事を思い出しながら視聴していたら自ずとラストが分かってしまった。
この物語と行き着く先は、両親や息子が「表面上の」完璧や理想を求めた結果なのかも知れない。
先入観や偏見、思い込みや勘違い、時には偏った知識や愛情が、その思考や判断を誤らせる場合だってある。ただね、これはね
気付けたんだよ
お父さん