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劇場版 RE:cycle of the PENGUINDRUM [後編] 僕は君を愛してるのbluebeanのレビュー・感想・評価

4.0
当時TV版を観た時は、溢れる情報を整理できず、テーマ的なものがほとんど理解できませんでした。鑑賞後に巷の考察を見てもわからず、なんとか理解しようと色々考えてなんとなくわかったような気がしていた記憶があります。でも再度劇場版を見てびっくり、やっぱり分かりませんでした。家族の呪いによって規定された自分という箱の中に閉じ込められた子供達が、愛し合っていることを認識した上で自己犠牲をすることで救われる話。そいう言うとそうなのですが、そんな一言でまとめたくないと思うほどいろんな要素に溢れていて、それが本当に自分の中で整理できなかったです。そして、それがこの作品の本当の魅力だと思います。

社会問題に真摯に向き合ったストレートなテーマなんだろうな、と思うのですが、そこにピクトグラムに代表される象徴的な演出がどっさりと盛られています。こどもブロイラーとか、牢屋に閉じ込められるシーンみたいに、現実を描いているのか、キャラの内面を象徴的に描いているのかが非常に分かりにくいシーンの連続です。その一つ一つを理解しようとがんばって考えているとあっという間に置いて行かれてしまいます。でもそれがなぜか心地よいのが不思議です。

95年のサリン事件をモチーフとしていて、TV版が10年以上前の放送なのにも関わらず、テーマ的に古い印象がいっさいありませんでした。格差、共同体の解体、家族の空洞化、などで「透明な存在」になりそうな人々は増える一方なのではないかと。

あいかわらず、無垢な存在として隣にいてくれるペンギン達の姿には癒されます。非常に重たい後半の雰囲気は、このペンギン達なしには辛すぎて見ていられなかったかもしれません。そんな可愛い彼らすら、主人公たちの内面を象徴するものとして描かれていそうで、まったく油断でいないのですが。
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