空海花

ちょっと北朝鮮まで行ってくるけん。の空海花のレビュー・感想・評価

3.8
北朝鮮の拉致被害者については映画もあったし、北朝鮮という言葉が出れば話題にものぼりやすい。
この作品のテーマは北朝鮮に渡った日本人妻。

初めての海外旅行は北朝鮮だった─
北朝鮮に渡った姉と58年ぶりに再会した女性のドキュメンタリー。
67歳の林恵子さんの20歳上の姉 愛子さんは在日朝鮮人の夫と共に北朝鮮へ渡った。
手紙をやりとりしていたが、姉の変貌ぶりに反発し、絶縁。
長年音信不通となっていたが、姉の消息を知り、訪朝を決意。
監督・プロデューサー・撮影は、TVのドキュメンタリー作品を数多く手掛ける島田陽磨。
元々は深夜のTVドキュメンタリーとしてあったものにカットを追加して
姉と妹の重層的な物語にしたかったと語っている。

1950年代から84年にかけて日本では北朝鮮への帰還事業があり、
在日朝鮮人とその家族が北朝鮮へ移住した。
日本政府側としては貧困者の厄介払いのようなものでもあり
その割合は実は韓国人の割合が圧倒的に多く、当時の韓国政府の独裁、メディアも韓国を悪者にする向きもあり、その後も続く北朝鮮の閉鎖性が、楽園を夢見た人々を追いやった。
帰還事業の記念碑の文字は今はもうかすれていた。

“3年経てばまた日本に帰れる”
結局それは方便に過ぎず
拉致問題が解決されず日朝関係は悪化。
万景峰号を含む全ての船舶は入港禁止になった。

恵子さんとその家族の人柄が素敵だった。
撮影場所は制限はあるものの、撮影自体は問題ないらしい。
見せられる街並みはキレイだが、人が少なく感じた。
でも移動のバスはすごく揺れていたり
たった1本の地下鉄の中や(但し一区間のみだった)お店の雰囲気など、珍しくて食い入るように見てしまった。
冷麺がすごくおいしかったらしい。

前半は個別のインタビュー
後半で再会してからの様子を映す構成。
そして恵子さんのその後…恵子さんは姉や姉の友人と会ったことで、もっと再会できる家族がいればと考えるが…
物理的にというより、精神的に厳しいものがあった。

SNSでは
自分で選んで行ったのだから“自業自得”
拉致被害者とは違う“自業自得”と
やたらその言葉が目につく。

私は知っていた話だが、完全に忘れてしまっていて、恥ずかしくなった。
色々な方向からの情報にはなるべく触れておきたいものだ。


2021レビュー#192
2021鑑賞No.429/劇場鑑賞#88


延長再上映に感謝🙏
空海花

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